4.私は何になりたい?(Op.26)
2010年11月17日(水)
「”私は羊歯になりたい”による変奏曲 作品26」という大変美しい曲が、ソルの作品にあります。古いフランスの民謡で恋人の眠る部屋の窓づたいに、羊歯(しだ)になってでも会いに行きたい、というような恋心を歌ったものだそうです。
主題はいかにも「切なく」、恋する余りに、愛する余りに、胸引き裂かれる、・・・と言った感じの旋律(イ短調)です。アウフタクトではじまり、付点のつ
いたリズムは支えを失った心が失意のそこへ下降するかのようです(A)。後半では一転して明るい気分となり(平行調のハ長調)旋律は上向し、気分は「高
揚」します(B)が、すぐにまたイ短調へと回帰します。ここでは「切ない気持ち=イ短調」「明るい気分=ハ長調」という調的な対比だけでなく「落胆=付点
を伴った下降」「希望=滑らかな上昇」という対比が重要です。勿論それは演奏者にとって大事なことです。
しかしこの曲の序奏(Introduction) はいささか変わっています。殆どのソルの作品では序奏部は次ぎにやって来る主題に対して「属和音による半終止」で、期待を高めますが、この曲では完全終止
をします。それはあたかもこの序奏部がまるで「完結した音楽」っだり、それは「主題」の様に聞こえてしまう危険があるのです。しかし、あくまでも序奏は
「恋という病」に陥った若者が登場するための場面設定をしているに過ぎません。そのことはこの序奏部の主題に対するテンポの見つけ方、そしてこの部分の
「雰囲気」をどのように表現するかということに大きく関わってきます。
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