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2008年9月の Diary
from Nov. 19th 2002
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2008
30日/作曲と編曲の日々
29日/7-7.ふるさと《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan - Furusato
28日/7-6.すいすいすっころばし《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Zui-Zui Zukkorobashi
27日/やったぞ、ピーター・アーツ !
26日/7-5.浜辺の歌《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Hamabe no Uta
25日/7-4.通りゃんせ〜かごめ《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Touryanse & Kagome
24日/7-3.《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Hana
23日/7-2.さくら《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Sakura
22日/7-1.《ラプソディー・ジャパン》-構想
Rhapsody Japan - It's idea
21日/6.《天使の協奏曲》第3楽章
a L.Brouwer
20日/5.《天使の協奏曲》第2楽章
a F.Tarrega
19日/4.《天使の協奏曲》第1楽章 a F.Sor
18日/3.エアー Air
17日/2.リバーラン River Run
16日/1.紺碧の舞曲 Danse d'Azur
13日/CDと楽譜も売れました!
12日/レオナルド・ブラーボの「五つの小品」
11日/来週タケオ&金、コンサート
10日/スペインと南米の音楽
9日/庄内フェスティバルの報告
6日/なんと、セゴビア氏!
3日/DVD「W.カネンガイザーとその仲間達」発売!
2日/CD「藤井眞吾ギター作品集」発売!
1日/庄内国際ギターフェスティバル、無事終了

 
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作曲と編曲の日々
2008年9月30日(火)

今日で9月も終りで明日から10月。・・・ずっと作曲と編曲に追われています。ひとつは委嘱をいただいていたフルートとオーボエ、そしてギターのための三重奏曲。これは11月7日に東京のJTホールで行われる室内楽シリーズ「ギターの室内楽XI〜カステルヌオーヴォ=テデスコを想う〜」で演奏されます。フルートは佐久間由美子さん、オーボエは広田智之さん、そしてギターは福田進一さんです。テデスコを讚えての作品。「Convivio 饗宴」と言うタイトルで数分の曲になりそうです 。もうすぐ書き上がります。来月のアートステージでは日本の民謡と唱歌を演奏しますから、そのための準備も大変です。今回は沢山の曲を編曲しなければなりません。例によって最終のプログラムが決定するのは直前になると思いますが、面白いコンサートになると思いますので、是非お越しください。10月18日に演奏予定の曲をアップしました。

 

7-7.ふるさと《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan - Furusato
2008年9月29日(月)

こうしてCDとなってみると、レコーディングやツアーのことが遠い昔のような気がしてしまいますが、まだ三ヶ月しか経っていない出来事です。余りの忙しさにゆっくり回想する暇もありませんでしたが、こうして一曲ずつを解説してゆくと、色々なことが思いだされ、またCDの曲目解説では書ききれなかったこと(・・・書くことが出来なかったこと)なども沢山思いだされます。岡野貞一氏の「ふるさと」は私が最も好きな日本の歌のひとつです。この曲は随分以前からギター独奏用に編曲してあちこちの演奏会で弾いたり、また「フルート&ギター版」「フルート2本、チェロ&ギター版」さらには「フルートとオーボエ&チェンバロ版」なども書きました。今回ギター二重奏に書き改めて、響きは一層ふくよかになりました。この曲でもカネンガイザイー氏の、まるで「ふるさと」のメロディーを何十年間も歌ってきたような演奏の艶は、本当に驚くべきでした。
 是非このCDアルバム「藤井眞吾ギター作品集」を皆さんにお聞きいただきたいと思いますし、また同時に発売されたDVD「W.カネンガイザーとその仲間達」はレコーディングの二日後に博多で行われた演奏会のライブ収録ですので、演奏会の熱気も伝わってきますから、こちらもご覧戴けたらと思っております。(写真は6/24の広島公演、演奏直後の私達)

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7-6.すいすいすっころばし《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Zui-Zui Zukkorobashi
2008年9月28日(日)

なかなか意味のわからない歌詞、といえば《ラプソディー・ジャパン》のなかでは、この「ずいずいずっころばし」が東の正横綱でしょう。今回これらの曲を演奏・収録をするにあたり、歌詞の意味、各曲の描く情景などをあらかじめカネンガイザー氏に説明しようと思ったのですが、全くその時間がありませんでした。またそれが出来たとしても、膨大な労力と時間がかかっただろうと思います。しかしカネンガイザー氏はそう言ったことも全く苦にせず、楽譜から100%以上の音楽を引きだしてくれました。6月のツアーの前、北京で一緒だったのですが、北京のホテルに居るときから「あのアルゼンチンタンゴみたいな《ズイズイ》っていう曲は、いいね!」と体を揺すりながら言ってくれていました。この曲では 1st guitar と 2nd guitar がしばしば旋律/伴奏を交替します。間奏の後には「ずいずい・・・」のメロディーだけでなく、《ラプソディー・ジャパン》のなかでここまで聞かれた旋律が断片的に回想されます。すなわち「さくら」「花」「通りゃんせ」「かごめ」などです。いかがです、お分かりになりましたか?

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やったぞ、ピーター・アーツ !
2008年9月27日(土)

(閑話休談)20世紀最強の暴君の異名を持つK-1戦士、ピーター・アーツが昨日韓国ソウルで行われた K-1グランプリで見事、セーム・シュルトを下しました。シュルトは連続のK-1チャンピオンでした。2メールをはるかに越え、空手家であるシュルトはここしばらくわが物顔で闘っていましたが、その仕合の内容はちっとも面白いものではありませんでした。実力もあるのでしょうが、試合運びにスリルが感じられず、技の切れ味もありません。「凄いな」と思うのはそのけた外れの体格だけ。これまでに並居るK-1選手を打ち負かしてきましたが、どうも僕の気持ちの中は、本当に彼がチャンピオンだろうか、という忸怩たる思いで一杯でした。試合に勝ったのだから、シュルトが一番強い、と言う人がいるでしょうし、本人もそう言っていますが、しかしあの体格の差は、いかにアーツ、レバンナ、ホースト、などをもってしても歯が立たず。どうも僕には「名刀村雨」をもって、山のような薪を切れと言われているようで、面白くありませんでしたが、今日ついにP.アーツがその雪辱を果たしてくれました。この喜びは、その前の仕合でバダハリがチェ・ホンマンに買ったことの数百倍にも匹敵します。(・・・明日からまたCDの話題を続けます)

 

7-5.浜辺の歌《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Hamabe no Uta

2008年9月26日(金)

前楽章はハーモニックスではなく2本のギターの強奏で終りますが、やはりその余韻をたっぷりと聞きます。重哀しい曲調から軽やかリズムとふんわりとした響き、穏やかなメロディーに移ります。浜辺の歌は以前、2004年に姫路市立美術館でクリスチャン・プルヴィエというベルギー人のフルート奏者と一緒にコンサートをしたときに、編曲したものです。このときはそのほかに「荒城の月」も編曲したのですが、いずれもかなり気に入っていた編曲です。ただし旋律の動きはフルート的に書いていましたので、今回はハーモニーはそのままに、旋律の動きはギター用にかなり書き直しました。私は小学生になるまで海のごく近くに住んでいました。祖父は漁師でした。波の音には郷愁を感じますが、この曲では余り日本的な海岸ではなく、どこか南国の、さんさんと太陽の照る、のどかな海岸のイメージです。作曲者の成田為三は秋田の生まれだそうですから、私が見ていた海と、成田氏の見ていた浜辺は、そう遠くはないのだと、最近になって知りました。ここではカネンガイザー氏は、しなやかに、そして艶やかに旋律を歌います。ハーモニックス奏法による旋律は太陽の輝きをはね返す波のしぶきのようです。後半に少しだけセカンドギターのソロがあって、そしてファーストギターの大きなアルペジオと合流して、また再び穏やかな海岸の情景に戻ります。トロピカルドリンク片手に、お聞き下さい。(上の写真はレコーディング風景、ミキサー室での、左から、フォレストヒルの森岡社長、私、そしてカネンガイザー氏)

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7-4.通りゃんせ〜かごめ《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Touryanse & Kagome

2008年9月25日(木)

ギターには「ハーモニックス奏法」という奏法がありますが、《ラプソディー・ジャパン》のそれぞれの楽章のほとんどはこの「ハーモニックス奏法」による様々な音で繋がっています。特に余韻の長いこれらの音が作りだす音の空間と、時間の流が私は大好きです。そこには「期待」や「緊張」、あるいは「安堵」と言った相いれない様々な瞬間が生まれるからです。演奏者はこの曲を弾くとき、楽章が変わるタイミングを様々に自在に感じて欲しいと思います。この余韻が聴衆に与える時間は、この曲の「命」とも言える時間です。特に大事にしたかった「曲間」は「花」とこの楽章「通りゃんせ〜かごめかごめ」のところです。ずっと昔から「とうりゃんせ・・・」と歌いだしたその次の「ここはどこの・・・」と歌うときの「こ」の不気味に上がりきらない音程が、トラウマのように私の耳に残っています。民謡やわらべ歌には良くあることですが、その歌詞の意味が不明であることと相まって、「通りゃんせ」は私にとって最も不思議な曲のひとつです。意味不明な歌詞といえば「かごめ」もそうです。歌詞の解釈には諸説ふんぷんでありますが、その視覚的背景にはいつもかならず姉さんかぶりをして、赤子を背負った幼い子守娘の姿が淋しくあります。ここではこの二つの歌を「クオドリベット」として、なんの脈絡もなく同時進行させています。何気なく聞いていればわからないくらいでしょう。こういった、もっとも特徴的とさえ言える日本の旋律を、一体どうしてアメリカ西海岸に育ったカネンガイザー氏が、ああまで「切なく」「哀しく」歌うことができるのでしょうか。これもまた不思議なことです。三回繰り返しますが、最後に出てくる「かごめ」のカノンは1stギター、すなわちカネンガイザー氏が一人で弾いています、その音色の使い分け、歌い方は神業のようです。美しい!

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7-3.《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Hana

2008年9月24日(水)

「春のうららの隅田川・・・」と始まるこの曲は、子供心に「隅田川という川のある東京に行くと、きっとこんな音楽が流れているんだろうな」と、一種の憧れのような音楽でした。武島羽衣作詞、滝廉太郎作曲この曲はなんの衒いもない自然なメロディーの動きが、美しい川の流れを象徴しているようです。最初は2ndギターのアルペジオから始まります。ハイポジションを使った密集和音の分散で、ポジションが下降するに連れて和音は開き、開離します。小さな川の流れが次第に大きな流れになってゆく、そして時には激流となる様を二つのギターの和音をぶつけて表現したつもりでした。そして再び清流へと戻って曲は頂点を迎えると・・・。実はラプソディー・ジャパン(Vers.2)はカネンガイザー氏とのレコーディング及びツアーの直前に(今年の6月4日)福田進一氏と山形県で演奏しているのです。ですからこの曲の構想はほとんど最初から「1stギターは福田進一、あるいはW.Kanengiser」という前提で書いています。勿論2ndは私。限られた(かなり限られた)時間の中でリハーサルをし、本番にかけられなければいけません。そういう事を考えながら書いたのですが、福田氏とやったときにはこの楽章のテンポを私が思っていたよりかなり押さえ気味で演奏しました。と言うのも彼が「それじゃあ激流になってしまうから、もっと優雅なテンポでいこう・・・」と言うことでした。勿論福田氏は全編に渡って素晴らしい演奏で、この曲の初演を飾ってくれたのですが、後になって考えてみたら、私の頭の中にはメロディーが滝廉太郎のこの曲でありながら、何故か岡野貞一作の「春の小川」の雰囲気があったようです。「春の小川はさらさら流る・・・」ということで、快速調のテンポをイメージしてしまっていました。武島羽衣の詞には「うらら」とか「ながめを何にたとふべき」など、やはりゆったりと優雅な時が相応しかったのかもしれません。さてレコーディングでは、そんなことは忘れてしまって、ビルと楽しくハイウェーを突っ走るフェラーリのごとく演奏しております。

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7-2.さくら《ラプソディー・ジャパン》
Rhapsody Japan -Sakura

2008年9月23日(火)

序章に続く第2楽章は、日本古謡「さくら」です。日本の旋律として世界中でも良く知られています。ギターには横尾幸弘氏の有名な変奏曲があります。私は以前に武満徹さんの「SONGS」という合唱曲集から「Sakura」をギター二重奏に編曲して荘村清志さんとコンサートを企画したことがありますが、武満さんのこのアレンジはとても綺麗でした。この名編曲の影響を受けないように・・・、というのは実は意識の中にかなり強くありました。カネンガイザー氏は日本のお琴の音色を強く意識されて演奏していましたが、それはとても効果的でした。私のイメージの中には満開の桜の爆発するようなエネルギーと同時に、崩れ落ちるように散り始める花びらの有り様は、安部公房や梶井基次郎のように、ある種の狂気にも似た精神の昂ぶりを思わせずにはいられません。今度10月のコンサートシリーズでは「さくら」を独奏曲にして演奏するつもりです。

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7-1.《ラプソディー・ジャパン》-構想
Rhapsody Japan
- It's idea

2008年9月22日(月)

実は日本の民謡や唱歌をギターのために編曲する、それは単に編曲するというだけでなく、作品そのものの本質を失うことなく演奏会用の編曲を作る、という構想はかなり以前から持っていました。ギターの独奏だけではなく、色々な編成での編曲をこれまでに蓄積して参りました。それらを全て含めて、私は《Rhapsody Japan》 と呼称していくつもりです。現に、昨年2007年には京都の立命館大学ギター部のためにRhapsody Japan というギター合奏曲を書いていますが、これは五部編成のギター合奏ですので「version 5」と整理しています。今回書いたギター二重奏番は「verision 2」です。この二つの版は中に含まれる原曲の数と内容は同じですが、序章と編曲の内容はかなり違います。
 この編曲の中で私が最も腐心したことは「単なるメドレーにならないこと」そして「素材本来の美しさを失わないこと」の2点でした。 「単なるメドレーにならない」とはすなわち「単なる日本のメロディーの羅列」ではないということ、一連の作品を一貫して(連続して)観賞することによって「ひとつの作品となる」こと、を考えています。ですから「序章(イントロダクション)」は不可欠なものです。
  それから「素材本来の美しさを失わないこと」というのは、これらの旋律を使って何か別の音楽作品を作るとか、別な言い方をすればこれらを単なる素材にするのではない、ということです。Rhapsody Japan (vers.2) はCD & DVD の発売と同時にフォレストヒル出版から楽譜もでておりますので、是非沢山の方々に演奏していただけたらと思っております。《紺碧の舞曲 Danse d'Azurほどは難しくありません。

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6.《天使の協奏曲》第3楽章 a L.Brouwer
2008年9月21日(日)

最終楽章はレオ・ブローウェルに捧げています。ただし、勿論現在もご存命で活躍されています。ブローウェルは20世紀から21世紀にかけて様々な音楽を吸収しながら、ギターのレパートリーを産みだしてきました。彼が網羅する音楽のスタイルは極めて広範に及びます。最終楽章のために彼の作品から引用したものは有名なものばかり、「舞踏礼賛」「練習曲第8番」「恋する乙女のバラード」。中でも「練習曲第8番」のブルガリア民謡と言われている旋律はブローウェル自信も大好きで、このほかに「三つのスケッチ」「HIKA」などにも用いているものです。曲の冒頭は5つのパートの首席奏者によるピチカートソロから始まります。モチーフは「舞踏礼賛」からの引用、ミニマルの手法によって楽章全体を支配するリズムパターンを作ります。曲の終り近くに再び独奏ギターによるカデンツァがありますが、特にこの楽章は独奏ギターとギターオーケストラが「合奏協奏曲」のように一体となって音楽を創っています。カネンガイザー氏はそのことを熟知したたうえで、常にテンポのコントロールを見事にやってくれています。
 今年6月に北京でこの曲を演奏したときには大変面白いことがありました。 ギターオーケストラは北京音楽院の精鋭達(・・・その中には東京国際ギターコンクールの覇者二人も含まれていました)、全体にとっても良く演奏できているのですが、最終楽章のリズムの感じが重く、リハーサルを重ねながら少しずつ良くなっていきました。リサイタルでも良かったのですが、その後のガラコンサートでは更に良くなって、曲の終りの方、カデンツァが終りトゥッティーになったところで、彼らのリズムがとても生き生きとしていて、カネンガイザー氏と思わず目を合わせ「おいおい、連中すごく良くなったじゃないかい!」と無言で喜びあっていると、ふっと音がなくなる・・・。そう、喜んでいる場合じゃなかったんです、そこはソリストの入るところ。私もカネンガイザー氏も、二人ともにギターオーケストラに聞き惚れて、独奏者の入りをうっかり失念してしまったのでした。2秒くらいの空白でした。このCDではそれ以上の演奏を聞かせていますが、そのような空白はありません。

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5.《天使の協奏曲》第2楽章 a F.Tarrega
2008年9月20日(土)

ギター音楽の歴史の中でもっとも個性的な作曲家は、と問われれば私はタレガの名前を真先にあげるだろうと思います。それはなぜなら彼の作品はギターの使い方、そしてひとつひとつの音をどのように弾いたらいいのかというところまで詳細に考慮したうえで書いていると感じられるからです。しかし、タレガは突然に現れてきたわけではなく、それまでの様々な伝統の上に存在し、またそれらを集約したと言う意味でJ.S.Bachの存在にも共通したものを感じます。そしてもう一つの理由は、個々の作曲作品と編曲作品の完成度の高さです。そう言う作曲家に私が作品を捧げるというのは、おそらくとても大それたことだと思ったのですが、それを彼の流儀ではなく、私なりのやり方で、私自身の個性的な響き/サウンドを作り出そうと決断するにはそれほど時間はかかりませんでした。曲頭のリズムはマズルカ。モチーフであり主要ないくつかの音は Francisco Tarrega という名前のアナグラムです。すなわち Francisco Tarrega の部分を「cis = C#」「re = D」「g = G」「a = A」と読み替えた四つの音。もう一つのモチーフは名作「アルハンブラの思いで」の旋律です。これらのことは以前にフォレストヒルニュースに詳しく書きましたし英語サイトにもありますので是非ご覧下さい。あとは、アンサンブルとしてギター合奏の、ある意味での「音色の可能性」を追求してみました。異った奏法によるユニゾンの重ね合わせは思わぬ効果を生みだします。曲はギターオーケストラと独奏ギターが交互に会話を交わすようにすすめられます。カネンガイザー氏の美しい音色と、これまでの彼のレパートリーからは余り聞くことが出来なかった、無調性の音楽の美しさを是非お聞き下さい。

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4.《天使の協奏曲》第1楽章 a F.Sor
2008年9月19日(金)

この曲を書いたのは2006年、もう二年前になるのですが、なぜか昨日のことのように思いだされます。作品を書くきっかけや動機は様々にあるだろうと思うのですが、この曲の場合は「極めて限られた条件の中で、名手W.カネンガイザーとともにひとつの音楽を作りうる作品」という点に集約されていました。各楽章に良く知られた作曲家の名前を冠し、またそれぞれの音楽作品との関連や引用を用いるというのは、聴衆にとってばかりでなく、ギターオーケストラのメンバーにとっても、親しみをもってこの作品へ自ら歩み寄る大きな手がかりになるだろうと考えたのです。第1楽章はカタロニア出身の偉大な音楽家、フェルナンド・ソルに捧げ、古典派の例に習いソナタ形式をとっています。ホ短調。序奏から始まります。第1主題は二つの部分から出来ています。ギター独奏による悲壮感に溢れた旋律。続いて有名な練習曲「月光 Op.35-22」。第2主題は「Op.44-3」、この曲は私が子供の頃から慣れ親しんだ大好きな曲です。原調は「ハ長調」ですが、第1主題のホ短調に呼応してト長調で演奏されます。三声で書かれていますが、独奏者とパートリーダーによる三重奏で Tuttiへと繋がります。展開部のほとんどは独奏ギターのカデンツァ。カネンガイザー氏はここで素晴らしい集中力で音楽を並行調のト短調へとリードします。その音楽的支配力は再現部第2主題の「ホ短調」でも発揮されます。コーダはソルの晩年の傑作「悲歌的幻想曲 Op.59」 との関連を強く意識しています。またここに来て、全体の付点を伴ったリズムが初めて有機的に聞かれるはずです。特に展開部では古典派の慣例を逸脱した和声を用いていますが、カネンガイザー氏は私の作曲した全てのアイデアを見事に実現し、完ぺきな演奏で聞かせています。《天使の協奏曲》はこのように始まります。

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3.エアー Air
2008年9月18日(木)

「藤井眞吾ギター作品集」としてCD収録のプロジェクトをスタートしたとき、実はこの曲は候補に上がっていませんでした。それはネガティブな理由ではなくて、この《Air》と言う曲は2007年の函館でのアンサンブル講座の課題曲として書いたものだったので、私の念頭には候補の曲として余り意識がなかったのです。ところがカネンガイザー氏の方からメールで「Air もレコーディングしよう!」と言ってきたのがきっかけでした。実は昨年GFAのコンベンションでロサンゼルスを訪れて、彼の生徒達と《天使の協奏曲》を演奏して、そのお礼の意味を込めて、学生達に楽しんでもらおうと思って彼に既にこの曲の譜面を送っていたので、彼はすっかり気に入ってくれていたのでした。曲自体は私もとても気に入っていましたから、この曲がもしかしたらアルバム全体の中で、一服の清涼剤になるかもしれないと考え、曲目にいれることにしました。もう一つのアイデアは、この曲を完全にカネンガイザー氏にお任せしよう・・・、と言うことでした。そのほうがきっと、面白い結果になるだろうという気がしたのです。メンバーは「1st=カネンガイザー、2nd=竹内竜次、3rd= L.ブラーボ、4th=中野義久」という最強の布陣です。収録前日に一時間ほどの練習をしたと思います、かなり細かなアンサンブルまで練習していたようですが、練習後カネンガイザー氏は「・・・彼らはスゴイね! あんな細かなアンサンブルまで出来ちゃうんだから、ビックリだよ!」と言っていました。それから「シンゴ、この曲はTVかラジオにテーマ音楽で売り込んだら絶対いいよ!」と大真面目に言ってくれていたのが、面白かったです。私はこの曲の演奏でカネンガイザー氏が見せた、たまらない「歌心」に心底惚れ込んでしまいました。
 すでに色々なところで演奏いただいているこの曲ですが、皆さん是非、この演奏を聞いて下さい! 

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2.リバーラン River Run
2008年9月17日(水)

今回のアルバムの中で、私もカネンガイザー氏も演奏に加わっていない唯一の曲がこれです。何年か前に池田慎司さんと岩崎慎一さん、そして松下隆二さんという三人のギタリストが九州と琵琶湖リサイタルシリーズで演奏会をしましたが《リバーラン River Run》はその時に書いた作品です。三人ともに私は個人的にもとても親しく、個々の付き合いも長く、一人一人の性格も良く知っています。ですから曲を書くときには「此処は池田君が・・・、そして松下君がこう入ってくる・・・」という風にいつも考えていました。ところが曲ができ上がったのは彼らの演奏会一週間前で、あわてて出来上がった譜面をもって彼らの練習していた大阪の岩崎君の家に届けたのは、台風の風が吹き荒れる9月のことであったと思います。譜面を渡すと早速に音出し、すぐに音楽の感じをつかんでいました。後になって気付いたことなのですが、結局パートは「・・・ああ誰がどこでもいいよ」と言って渡したので、書きながら思っていたパートとは実際には違ったかもしれません。でも今になってみると、そんなことは全く関係がありませんでした。
 レコーディングの前日、三人のリハーサルをカネンガイザー氏とフォレストヒルのレッスン室に覗きにいきました。カネンカイザー氏は曲を聴いて「なんだ、シンゴはこんな曲も書いていたのか! どうして僕をこのメンバーにいれてくれなかったんだい?」とお茶目な表情で言っていました。久し振りに聞かせてもらった三人の演奏は、正確さと音楽の柔軟さが初演の時の何倍にも増して、音楽のスケールが大きくなっていました。そのことはまたもう一つの嬉しさでした。 是非お聞き下さい!

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1.紺碧の舞曲 Danse d'Azur
2008年9月16日(火)

今回の収録曲を紹介して行こうと思います。
第1曲目は《紺碧の舞曲》というギター二重奏曲です。曲全体は「プロローグ」と「舞曲」という二つの部分から出来ています。最初はこの「舞曲」の部分を作曲したのですが、なんだか唐突な感じがしたので、序章にあたる部分を後から書き足しました。結局この「プロローグ」では「舞曲」のなかで使っているいくつかのモチーフを提示することが出来て、全体としてはまとまりが良くなったと思っています。この前半部分で「6/8」で少しリズミカルなところがありますが、ここはまだゆったりとしたテンポです。なぜこういう構成になったかというと、この曲を作曲依頼して下さった柴田健さんと福山敦子さんの二重奏のために、最初は四楽章のソナタを書くつもりで、まずその最終楽章にあたる「ロンド」を書いたのでした。これがそもそもの「紺碧の舞曲」の誕生です。しかし、柴田さんからもうすぐ東京で演奏会があるから、その時に演奏したい。という申し出が有り、とてもそれに間に合わなくて、プロローグを挿入することで単一の楽曲としたのでした。 CDではカネンガイザー氏(1st ギター)と私(2nd ギター)で演奏しています。 色々な要素の混じった、若々しくエネルギッシュな音楽です。是非お聞き下さい。

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CDと楽譜も売れました!
2008年9月13日(土)

今日はCD「藤井眞吾ギター作品集」それからDVD「W.カネンガイザーとその仲間達」が発売されてから京都での演奏会は最初です。ですからコンサートが始まってから終演まで、CDをかって下さる方が沢山いらっしゃいました。またプログラムの最後を飾ったのはL.ブラーボの「五つの小品」を弾きましたので、ギターを勉強している人達は「綺麗な曲ですね、僕もやってみよう!」と買っていく人がいました。コンサートシリーズ第24回は《南米とスペインの音楽》、このような形でスペインと南米の音楽をまとめるのは初めてのような気がします。やはり独特の雰囲気がありましたし、スペインも南米も、ギター音楽の宝庫であることを痛感させられました。休息の間のワインもスペインのワイン、私も一杯予約しておいて、終ってからいただきました。次回は日本の音楽です、乞うご期待!

 


レオナルド・ブラーボの「五つの小品」
2008年9月12日(金)

レオナルド・ブラーボが今年の初めに書いた「五つの小品」を今度の土曜日に演奏します(藤井眞吾コンサートシリーズ vol.24《スペインと南米の音楽》)。レオナルドはこの曲を自分の生徒達のために、学習の意欲をかき立てたり、また基本的にして且つ重要なことを楽しみながら学べるように、と言う目的で書いたと言っています。しかし、たとえばバルトークの「子供のために」やストラビンスキーが姪御達のために書いたピアノ四手連弾の「小品集」、更にはタンスマンがギター学習者の為に書いた「小品集」などの例のように、そこに聴かれる音楽は、まるで自分の子供たちに煮魚の小骨を取って食べさせる様な親の姿が見え隠れします。不純物の無い音楽、とでも言えばいいのでしょうか。確かに技術的に要求されるものはどれも簡潔で基本的なものばかりですが、どれも重要で不可欠なものです。音楽は無駄が省かれて研ぎ澄まされている分、演奏者にはその音楽表現の深みを限りなく与えられています。「簡潔な手の流れから生まれる美しい旋律とハーモニーの第1曲」「実は極めてギター的ではないのに、限りなく美しい旋律の第2曲、ひとつひとつの音のコントロールが求められます」「時間の流れに沿って形を変えていく音楽、それは変奏曲という既製品ではない、作者にしか考えられない時間の経過を持った第3曲」「自然に発した声をそのまま書き綴った様な音楽、それでいて正確に計算されたバランスを持った第4曲」「八分音符ひとつ分ずれて進行する3/4拍子と6/8拍子が、絶えることの無い川の流れ、大きくも、静かにも、そして奔流とも姿を変える川の流れが聞こえてくる第5曲目」いくつもの純粋なアイデア姿を潜めたこの作品は、私にとって最も興味深い音楽のひとつとなりました。是非お聞き下さい!

 


来週タケオ&金、コンサート
2008年9月11日(木)

来週土曜日(20日)吹田市のメイシアターで「タケオサトウ」さんと「金庸太」さんお二人によるコンサートがあります。金さんとはつい先日庄内フェスティバルでも御一緒しました。素晴らしいテクニックと誠実な音楽を演奏されます。タケオサトウ君はドイツ生まれの日系人。お父様が有名なギター制作家のカズオサトウ氏です。昨年ロサンゼルスのGFAコンクールで演奏を聞きましたが、非常に堂々としたエネルギッシュな演奏でした。楽しみな演奏会です。同じプログラムで、東京でも開催れるようです(9月16日 タケオ・サトーとジョイントコンサート (日暮里サニーホール・コンサートサロン19時開演)。

 


スペインと南米の音楽
2008年9月10日(水)

今度のアートステージ567でのコンサートシリーズは第24回となりますが、タイトルは《スペインと南米の音楽》。・・・大きなテーマです。ギターの音楽で「スペイン/南米」というのは余りにも大きな意味を持っています。実は私自身、もっともっとこれらの音楽の勉強し、掘り下げたいと思っているのですが、まだまだ満足にはほど遠いものがあります。「スペイン」というと、「フラメンコ」というイメージを強くもたれる方が沢山いらっしゃいますが、ギターのレパートリーは決してそれだけではありません。むしろスペインのクラシックギターのレパートリーはそれ以外のものが非常に多く、特に古典派や浪漫派では重要なものが沢山あります。また、ルネッサンスの時代はギターに非常によく似たビウェラの為の素晴らしい作品があります。南米のギター音楽の歴史はスペインに比べるとはるかに新しいのですが、極めて多岐に渡り、様々な国の数多くの作曲家が沢山の曲を書いています。民族音楽との融合・・・、ジャズや現代音楽との融合・・・、新たなギター音楽のスタイル・・・、などなど。今度のコンサートシリーズでは、そういった多様性をお楽しみいただきたいと思っています。プログラムを更新しましたのでご覧下さい。

 


庄内フェスティバルの報告
2008年9月9日(火)

山形県での庄内ギターフェスティバルが幕を下ろして9日が過ぎ、主催者ホームページは勿論のこと、関係者や参加者のブログでもフェスティバルのことが色々に報告されていて興味深く拝見しています。なかでも「たんぽぽのお酒」というブログはきっと参加者(受講者)のブログで、日記のように一日ごとの出来事を綴っており、内容の詳細さと作者の感想がとても面白いです。フェスティバルの熱い空気が昨日のことのように回想されます。

 


なんと、セゴビア氏!
2008年9月6日(土)

函館で「バル街」というイベントが年に二回開催されているという話を以前にお伝えいたしました。たまたま今年の四月に函館で仕事があったときバル街にお邪魔したのですが、今年の秋の開催が9月7日にあります。その前夜祭とも言うべきイベントが、函館の「スペインクラブ」の皆さんで行われ、ゲストにスペイン大使、そして私がお招きいただき、私は約一時間のプログラムを演奏いたしました。なんとスペイン大使のお名前は「セゴビア」氏。終演後CDにサインを求められたのですが、まさか「セゴビアにサインをする・・・」とは夢にも思っていませんでした。会場は函館の国際ホテル。会員以外の一般客もいらして100名前後の大人数でした。写真は二次会会場、スペイン居酒屋「ラ・コンチャ La Concha」 での様子です。

 


DVD「W.カネンガイザーとその仲間達」発売!
2008年9月3日(水)

CDと同時に「W.カネンガイザーとその仲間達 in Japan 2008」がリリースされました。これはCD収録の二日後(2008年6月22日)に福岡の「あいれふホール」で開催された「W.カネンガイザー ギター・リサイタル」のライヴ収録です。プログラム構成は「第1部=カネンガイザー氏のソロ」「第2部=藤井眞吾作曲二重奏、三重奏、四重奏」「第3部=天使の協奏曲」という内容です。 CD「藤井眞吾ギター作品集」にカネンガイザー氏のソロが4曲プラスされています。 ライヴコンサートならではの臨場感、また演奏者の表情から、指使いまでが手に取るようにうかがえます。私がこのDVDで最も好きなのは最後にあるエンドロール。いわゆる映画などの最後にある「メイキング・ビデオ」の様なもので、レコーディング前のリハーサルや、本番当日の写真撮影の様子、楽屋の様子などがカメラマンの優しい目線でおさめられています。音質を求められるなら・・・、何と言っても CD「藤井眞吾ギター作品集」を・・・、そしてより多くの視覚的情報を楽しみたい方はこの「W.カネンガイザーとその仲間達 in Japan 2008」をお買い求め下さい! お買い求めはフォレストヒルで!

 


CD「藤井眞吾ギター作品集」発売!
2008年9月2日(火)

今日、フォレストヒルレコーズより「藤井眞吾ギター作品集」がリリースされました。去る6月20日、福岡の「あいれふホール」で収録したものです。カネンガイザー氏と会場のスケジュールの都合から、なんとわずか一日での収録となりましたが、カネンガイザー氏をはじめとした九州(フォレストヒルミュージックアカデミーの)演奏者達、大阪からの二人の助っ人、そして録音スタッフの協力により、素晴らしい内容のものに仕上がりました。収録曲は、紺碧の舞曲リバーランエアー天使の協奏曲ラプソディージャパン(vers.2)。私は「紺碧の舞曲」と「ラプソディージャパン」でカネンガイザー氏と二重奏を、「天使の協奏曲」では指揮をしています。音質も最高です、私達の演奏を是非お聞き下さい。お買い求めはフォレストヒルで!

 


庄内国際ギターフェスティバル、無事終了
2008年9月1日(月)

庄内空港から大阪の伊丹空港へ約一時間、空港には家内が車で迎えに来てくれました。内容の濃い、有意義なフェスティバルであったと思います。庄内フェスティバルの開催中、毎日が猛烈に忙しく、当ホームページを全く更新することが出来ませんでした。内容をかいつまんでリポートいたしましたので、是非ご覧下さい。

 

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