「縁の下の力持ち」という表現が日本語にはありますが、おそらくバロック時代のヨーロッパの人々にはこの言葉が、とても当たり前に聞こえたのではないかと思ってしまいます。ギターでもしばしば演奏されるJ.S.バッハに代表されるこの時代の音楽は、いえそれ以降もずっと長い間、ヨーロッパの音楽は「低音」を基本として考えられ、そして組み立てられてきました。《Air》でもその考えは完全に当てはまるのです。
4th
Guitar にはいくつもの仕事をしていただかなければなりません。まず「全体を支える、どっしりとした低音」そして「もうひとつの中間にある声部」を演奏するということです。他のパートは殆ど常にひとつの声部(メロディー)を演奏しますが、4th
Guitar は殆ど常にそれを二重にやっているわけです。ですから「和音を弾く」技術や、二声部を弾くという音楽的な難しさがこのパートにはあります。
譜例9
テーマでは「譜例9」の様にゆったりとした低音の流れに対して、なめらかな上声部が(全体的には中声部となりますが)を、あるいは逆になめらかな低音の流れとゆったりとした上声部がみられます。指使いも大事です。よく考えながら、練習してみて下さい。
第一変奏ではアルペジオが出てきます。八分音符による動きですが、ここでは更にもうひとつの声部が増えたと・・・、すなわち「三声部」を弾いているのだと考えて下さい。「譜例10」でそれを色分けしてみました。
譜例10
第二変奏でも矢張りアルペジオですがここではもっと「ゆったりとした響き」あるいは単純なアルペジオをです。すなわち楽曲全体に「和声的な色合い」を加えることが目的ですが、低音だけは常にその音価を意識してください。八分音符で書かれていても、低音の支えとして伸ばしていただきたいところが沢山あります。「譜例11」をご覧下さい、色分けしてみました。
譜例11
こうして考えてみると4th
Guitar がいかに重要なパートであるのかが、お分かりいただけると思います。このパートだけが、まるで「ギター独奏曲を弾くような」音楽的・技術的難しさがあります。
次回からは曲全体を通じて、一般的な音楽の話、また技術的なお話をしてみようと思います。
続く