サッカー日本代表チームはオシム監督になってから、一回り強くなったような気がします。以前のようにスター選手の名前が余り聞かれないような気もしますが、それがオシム流なのだろうし、そもそもサッカーという競技は個人技だけでは成り立たないからでしょう。私が若いころには野球といえば「讀売ジャイアンツ」、何と言っても
V9 という偉業を達成したのですから、今は信じられない話しです。英雄・長嶋茂雄、世界のホームラン王・王貞治、俊足の柴田、堅守の土井、ジャイアンツの頭脳・森、いぶし銀の国松・・・スター選手ぞろいでした。しかし
V9 を支えた最大の力は名匠・川上哲治氏の揺るぎない組織力と統率力であったことは言うまでもありません。
ギターという楽器はともすると「独奏」ばかりと思われがちですが、他の楽器とのアンサンブルでもその魅力は存分に発揮されますし、歌や旋律楽器の伴奏では主役を引き立てるばかりか、更なる魅力も加えることが出来ます。またギター同志のアンサンブルでは、独奏では味わえないギターの素晴らしさを痛感します。しかしギターの勉強は独奏に片寄りがちなので、アンサンブルは苦手という人が沢山います。アンサンブルとは「組織」であり、アンサンブルをするというのは「組織における自分の役割を理解する」ことから始まります。
アンサンブル講座の課題曲《Air》で、四つのパートがどのような役割を担っているのか、主題の場合についてみてみましょう。
譜例3
前節「(2) 旋律の形は音楽を表す」で説明した「 A
」のセクションでは 1st
Guitar が旋律を、そして 3rd
Guitar も全く1オクターブ下で(オクターブユニゾン)旋律を奏でています。これは一種の「オーケストレーション」の手法なのですが、これによって旋律は音響的によりしっかりと、ハッキリと響くようになります。
1st Guitar
の音域はギターでは「かぼそく」なりがちな高音域です。オクターブ下の音が 3rd
Guitar によって補強されることによって、旋律はよりゆったりと、そして充実した響きとなります。
2nd
Guitar は旋律に和声的彩りを加えています。ですから音程が正確であることはとても大事です。ここでは弾くポジションで弾けばその心配は殆どないはずです。音の動きも
1st Guitar
あるいは 3rd
Guitar と足並みをそろえているので、同じような気分で弾いて下さい。
譜例4
しかしこの役割関係は「 B
」のセクション(リハーサルマークのA)で入れ替わります。旋律は 1st
Guitar と 2nd
Guitar がオクターブで、そして 3rd
Guitar が和声的彩りを加えます。ただしここでの 3rd
Guitar の動きは旋律よりもむしろ 4th
Guitar に寄り添ったものとなっています。 4th
Guitar の動きを良く聞いてみましょう。
さて、 4th
Guitar の役割についてほとんどお話をしていませんでしたね・・・。このパートにはとても重要な役割をお願いしています。そのひとつは「低音の声部」を弾くこと、低音が豊かであることは演奏全体の響きが豊かであるかどうかに決定的な影響を及ぼします。そしてもうひとつは「中声部も演奏すること」を課しています。つまり4th
Guitar は二パート分の音楽をしなければなりません。ですからこの曲《Air》は殆ど5パートの合奏で演奏しても良いのですが、せっかくギターで演奏するのですから・・・、ギターは2つ以上の声部(旋律)を演奏できる楽器なのですから、このパートの方にはちょっと頑張っていただくことと致しました。テンポがゆっくりですので、技術的にはそれ程難しくないはずです。低音を良く響かせるように練習して下さい。
次は「変奏」がどのように行われているのかをみてみましょう。
(藤井眞吾/2007年10月2日)
続く