さてこの曲の名前ですが、「Air」という英語のタイトルにしました。何人かの方から「どういう意味ですか?」と聞かれましたが、これは「歌」という意味です。特に民謡などのメロディーを指して言う場合に「Song」ではなく「Air」という言葉を使うようです。「ロンドンデリーの歌」も「Londonderry
Air」と言いますね? スペイン語では「Aire」といいますが、英語の場合と同様に「うた」のほかに「空気」という意味が本来です。バリオスの「Aire
de Zamba」は「サンバの気分で」というような意味ですが、「歌」のことを「Air」というのはなかなか素敵な言い方だと私は思います。なにか「作ったもの」というニュアンスが無くなって、「空気!」といっている感じがいいですね。
特に器楽曲には、バロックや古典、そして近・現代でも変奏曲の形をとったものが沢山あります。イギリスの巨匠 B.ブリテン
の名作「ノクターナル Nocturnal」は私の大好きな曲です。L.ブローウェルの「舞踏礼賛 Elogio de la
danza」の前半は見事な変奏曲になっています。変奏曲と名打っていないものでも、実際にはその手法を使っているものもあるわけです。《Air》
もその様にはたいとるに書いていませんが、聞いて戴いたらすぐにそうであると解るでしょう。
ここでは各パートの「旋律」が変奏されています。すなわち「旋律の形(ライン)」が変奏されています。「(2)旋律の形は音楽を表す」でお話しましたが、ということは変奏されて旋律の形(ライン)が変わるわけですから、当然音楽も変わってくるわけです。鉄の意志によってダイエットを敢行し「ボディーライン」が変わって、女性の人生が変わるというのも、ちょっと似ているかもしれません。
譜例5
主題に対して「第1変奏」では旋律が八分音符を中心とした細かな動きになります。それと同時に旋律はより「軽やかに」もっと「空気」の様になって下さい。それに対して2nd
Guitar と 3rd
Guitar はスラーによる装飾的な十六分音符に応えます。練習番号「D」では 3rd
Guitar と 4th
Guitar の動きが八分音符の分散和音になって、全体の気分がもっと柔らかくなります。
「第2変奏」ではさらに音は細分化され十六分音符になります。主題は完全に「空気」あるいは「そよ風」になってしまいます。このとき
1st Guitar
はもはや「主役」ではなくなっています。「主旋律は」2nd
Guitar と 3rd
Guitar に移行しています。しかし聞き手の耳にはこの軽やかな動きが、とても心地よく聞こえるはずです。
譜例6
最後の方でハーモニックスが出てきます。「符頭」を白抜きにしてしまったのでリズムが少しわかりにくいかもしれません。上のように表記したほうが良かったですね。このハーモニックスはキラキラと輝く太陽の日差しのように、ハッキリと弾いて下さい。
次は 2nd
Guitar についてみてみましょう。
続く