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《続・独習者のためのステップアップ講座》
by Shingo Fujii
guitarstudy
shingo

CHAPTER 12.
本当のステップアップ(最終回)

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12-2
12-3
12-4

 

第4節「本当のステップアップ」

 さて、いよいよ本当の最後になりました。
 そもそもこの連載は一年前に仕事で横浜のホテルにいた時に、現代ギターの編集長から電話をもらって「独習者のための連載を書いてもらえませんか?」と言うことでスタートしました。連載が始まって本誌が送り届けられてから、この連載のタイトルが「独習者のためのステップアップ講座」と言うものであることを知りました。以来わたしは「ステップアップ、って何だろう?」とずっと考え続けていました。
 人間の身体の成長はある年齢に達すると終着点に到達し、そのあとは下降線をたどります。しかし創造力や学習能力、創作意欲は年齢を重ねるごとに高めることが出来ると私は思っています。勿論そのためには自己の怠惰や、環境の様々な要素と激しく格闘しなければなりませんが。しかし、そういった障碍を乗り越え、あらたな結果を生み出したとき、それはまちがいなく「ステップアップ」であり、向上したということではないかと思います。ですから、努力は毎日積み重ねなければ行けないものですが、ステップアップは時々しかやって来ないものであることを知っておかなければなりません。毎日の努力がステップアップなのだと考えるなら、それは本末転倒で、迷路に入ってしまう原因となるでしょう。
 また「ステップアップ」というのは、人様々であり、一般に論じたり、規定する事のできない「人間一人一人の変化」のことである、とも思っています。それはギターの勉強でも「…はい、これが出来るようになったら、あなたはステップアップしましたね」というようなことは、本当は難しいのではないかと思っています。勉強の過程で、カリキュラムの習得状況によって、便宜的にそれを言うことはできても、音楽家として、ギタリストとして「真に向上する、ステップアップする」ということは、既成の形で見えるものではなく、個人個人で様々であると思います。
 個々の問題を解決できることもステップアップでしょう。そもそも問題点に気付くことがその第一歩です。今まで出来なかった事ができるようになることもステップアップでしょう。新しい考え方や理解の仕方が出来ることはさらに大きなステップアップです。ひとつでも多くの曲を人に聴かせられようになることも大きなステップアップです。
 私自身ももっともっとステップアップして行きたいと思っております。この連載が少しでも皆様の助けになればと願って、筆を置きます。一年間のご愛読ありがとうございました。

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