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《続・独習者のためのステップアップ講座》
by Shingo Fujii
guitarstudy

shingoCHAPTER 4.
音を読む

  ここまで(第1章~第9章)は技術面での基礎練習の見直しをお話ししてきました。ポイントは「右手の練習は右手だけで」「左手の練習は左手だけで」、その後に「右と左のタイミングを合わせる」と、段階を踏んで練習するということでした。これまでに出してきた以下の課題(課題 1-2、1-3、2-1、3-1、3-2、3-4)は特に重要ですので、毎回必ず練習してください。
 さて今回からは実際に作品を勉強するときの注意をお話ししていきましょう。

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第1節「あなたは、どなたでしたっけ? 」

 だいたいあまり記憶力の良くない私は、道でばったり会った人に挨拶をされて「ああ、お久しぶりですね」などと調子を合わせていても、踵を返すとすぐに「はて、今の人は誰だっけ?」などということがしばしばあります。初対面の人に名前を伺ったとき、失礼を覚悟で「どのような字でしょうか?」と尋ねることにしています。そうすると、その漢字と一緒に覚えられる、あるいはその短いやり取り の時の相手の表情などが、一緒に記憶として残り、名前と 顔を覚えやすくなるのです。

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 ギター曲を勉強し、覚えるとき、皆さんはどのようにしているでしょうか。「メロディーを覚える」「楽曲の構成を理解し覚える」「運指(指使い)を覚える」などなどいろいろやり方がありますが、一番良いのはそのすべてを試み ることです。記憶は1 つの覚え方だけではなく、さまざま な角度から見てやった方が、深く永く記憶されやすい、と いうのは定説のようです。
 今回読者の皆様にして頂きたいのは、音の名前を「読み あげながら弾く」という練習の仕方です。曲だけではなく、基礎練習をしているときでも、習慣のようにいつも頭の中で、今自分が弾いている音を「ド~レ~ド~ミ~……」などと読みながら練習をしてください。そうすると単に「メロディー を覚える」というだけでなく、それらの「音名」はまるで「歌詞」のように記憶され、より記憶を確かなものにしてくれるからです。

 

  ギターを学ぶという事はとりもなおさず「音楽を学ぶ」という事、同じ事であるといつも思っています。本講座は独習者が更にステップアップする、すなわち日頃の練習の成果をいかにして結実させるか、あるいはその日頃の練習をどうするべきか、という事に焦点を絞った連載ですが、それは決して技術的な側面だけで事足りるという話ではありません。そのことをいかにして強調出来るだろうかといつも考えながら執筆をしておりました。特にここでの「音を読む」という話は極めて重要です。音楽を学校で学ぶ学生はこういった事を主に「ソルフェージュ」という訓練によって、習得していくのだと思うのですが、これは独習する人にも全く可能な事ですし、とても重要なことです。ただ、難しい点はこれには様々な角度からの音楽の理解や経験が必要なために、簡単な説明だけではそのことがなかなか読者に伝わらないという事です。
  ここでの内容は《第6回 記憶と理解》と密接に関係しています。「記憶」に関しては「暗譜」の問題と合わせて、あとでもう一度触れたいと思います。

(藤井眞吾/2012年5月24日)