最後にここで覚えた指の動きの感覚を、例えば「1オクターブのスケール上行/下降」しながら確実に「上行= クレッシェンド/下降=デクレッシェンド」、また、その 逆で「上行=デクレッシェンド/下降=クレッシェンド」 ……と練習してください。
クレッシェンドをする場合は「次の音は必ず少し大き な音でなければならない」、デクレッシェンドをする場合は「次の音は必ず少し小さな音でなければならない」とい うことを忘れないように。これは当たり前のことに思えま すが、その当たり前のことを本当に確実にできるかを確か め、できていなければ、できるようにして下さい。より細やかな音量のコントロールです。この練習は必ず「一定のゆったりとしたテンポ」で行なうこと。アチェレランド(加速)やリタルダンド(減速)をしないように気をつけて。

ここまでの練習が理解できた人は、同様の考え方で「音色の変化」についても練習しなさい。やり方が解らないと言う人は「第6章 記憶と理解」から「第8章 音色-その2」までをもう一度よく読んでください。変化させる要素が「弾弦する位置の変化」と「弾弦する角度」と2つありますので、気をつけて。これが完全にマスターされれば「弾弦する位置をまったく動かさずに最大限の音色の幅を得る」ことや「弾弦する位置が変わっても音色がまったく変わらない」という奇妙なコントロールができるはずです。もっと具体的に言えば「指板 の上で(sul tasto)硬い音を出す」ことや「駒寄りで(sul ponticello)柔らかい音を出す」ことが可能となります。
一体そんなことができて何になるのだろう、と思われるかもしれません。……そうです、何の役にも立たないかもしれません。普通に「柔らかい音は sul tasto」で「硬い音はsulponticello」で出せればそれで良いのかもしれません。しかしそう割り切ってしまう前に、今あなたが試してみたすべての「音色の変化」をよく記憶し、聴き 比べてみてください。音色をコントロールする技術を完 全に習得すれば「指板の上で(sultasto)硬い音を出す」ことができると言いましたが、その音は「駒寄りで(sul ponticello)出した硬い音」とは何かが違うはずです。同 様に「駒寄りで(sul ponticello)柔らかい音」は「指板の 上で(sul tasto)出した硬い音」と何かが違うはずです。似てはいてもニュアンスが違うでしょう。つまり音の表情 がより多彩になってくるはずです。何より大事なことは私たち自身が、ギターから発せられる音の微妙な変化を敏感 に感じると言うことです。
さて練習はこれで終わりではありません。ここでは「音量の変化」と「音色の変化」を個別に解説しましたが、最後の仕上げはこれら2つの要素を同時に行なってみることです。私たちはさらに多彩なギターの音に巡り会うことで しょう。
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