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《はじまりの音楽》
by Shingo Fujii

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曲集《はじまりの音楽》について

 この曲集は二つの目的および理由から作りました。一つ目の理由は、私 が音楽家となる以前から歌い、親しみ、愛してきた音楽、とりわけ私自身が生まれ育った国固有の数々の歌の中から、ギターのための作品として新たに編曲し、それらの音楽との絆をより深めたい、という希望です。なぜなら、私が音楽というものを強く意識する遥か以前から、民謡や唱歌との出会いは、私にとって音楽との関わりのはじまりであったと、今思うからです。もう一つの理由は、旧友でありギタリストの井桁 典子さんから「ギターの勉強を始める人たちのために、耳慣れた日本の民謡や唱歌の旋律を、“生徒と先生の二重奏”のために編曲できないでしょうか?」という依頼をいただいたことです。それはギターを学ぶ人たちのために、興味深いアンサンブル作品(独奏の音楽ではなく)を作りたいという、私が長年抱いていた計画と合致するものでした。 「はじまりの音楽」というこの曲集のタイトルは、こうしてつけられました。この曲集がギターを愛する人たちに、新たなはじまり、愛すべきはじまり、をもたらすことが出来るならと願っています。


藤井眞吾(2009年5月)

 

・・・上の文章は出版した「はじまりの音楽 第1集」に添えた言葉です。少し硬い印象の文章であったと思います。この曲集は極めて単純に「先生と生徒が音楽を楽しむために」作った曲集なので、もっと親しみやすく、平易な文章をと思っていたのですが、出版の準備に追われる中、私の脳裏に浮かんでくるのは、文部省唱歌の特異な生い立ちやそれらの数奇な運命、日本音楽の特殊性とこの編曲の関係、そして私自身がこう言った音楽に積極的に取り組むようになるまでの長い時間の経緯が、何度も何度もよぎり、硬いということは覚悟で、皆様にお伝えしなければいけないことをひたすら書き綴ったという記憶があります。
 発売直後から沢山の方々からの反響が私の元に届き、また私自身も自らの生徒のレッスンに使用しながら、曲集の中には書ききれなかったこと、また作曲/編曲者と言う立場よりは演奏する立場からの、いくつかのお話を皆様にお伝えしたいと思い、このサイトに書くこととしました。 この曲集を楽しむために、少しでもお手伝いが出来ればと思っております。


藤井眞吾(2009年7月)