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《続・独習者のためのステップアップ講座》
by Shingo Fujii
guitarstudy
shingo

CHAPTER 10.
左はあなたの敏腕マネージャー

10-1
10-2
10-3

 

第2節「なめらかな演奏の秘訣」

 なめらかな演奏をするためには右手と左手のタイミングがうまく合っていなければいけません。そのためには「課題3-4」の練習を短時間で良いですから(5分くらい)、毎回必ず集中して行って下さい。
 実際の曲を演奏する場合には特に「左指の運び」に気をつけること。特に和音が連続するような曲では、何本もの左指がいっぺんにポジションを移動したり、押さえを変えたりしなければならず、音が途切れたり、響きが途切れたり、なめらかな演奏にならないと言う場合があります。ソルの有名な練習曲「月光(Op.35-22)」の一部を例に説明しましょう。29小節目からです【課題-5】。

5
*クリックして譜例(画像)を拡大表示

 ここでの要点を整理すると「小節ごとに和音が変わっているが、小節線を跨いだところで、いっぺんに全ての音を押さえようとしない」「左指の移動を順番に行う」ことです。

【課題-6】〜前の課題にならって、タレガ作曲「ラグリマ」について考えて見なさい

 なぜ「右手→左手」と言う順で動作しなければいけないかと言いますと、左手の指が振動した弦を押さえたままの状態から「弦を放す」あるいは「弦を新たに押さえる」と、それは「下降のスラー」や「上行のスラー」と同じような現象をひきおこし、不必要な一種の「雑音 Noise」を発してしまうからです。  また、弦の上に「先に右手をおいて用意をする」ことによって、弦の振動は止められ、したがって音も途切れてしまいます。このことは一見、今の「なめらかに演奏する」というテーマと反対のことに思われます。しかし、それは極めて短時間のことであって、タイミングが上達してくるとそれは聞いている人には全く解らなくなります。それはちょうど、私達が映画館で見ている「動く画像」は一枚一枚の静止した画像を連続して見ているから、それらがあたかも「なめらかに動いているかのように錯覚している」のと似ています。右指が弦上に止まったその僅かの瞬間に左手は移動などの動作を完了しなければなりません。
 最初のうちはぶつぶつ切れたように聞こえても構いませんから、右手と左手の動作の順番を正しく覚え、それができたら、それらの動作の流れをより俊敏に、僅かの時間で出来るように練習しましょう。

【課題-7】〜このことをあなたのレパートリー全てについて試して見なさい

 もういちどホセルイス先生の言葉を借りるなら「アーティストである右手」が「次はこんな音を出すんだよ」と指示をしたその直後に左手が、すみやかに、音も無く準備をする・・・、それはまるで演奏家の活動を支えてくれる「敏腕マネージャー」のようにも見えてきませんか?