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《続・独習者のためのステップアップ講座》
by Shingo Fujii
guitarstudy
shingo

CHAPTER 6.
記憶と理解

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第2節「理 解」

  また最初に戻り、繰り返します。私たちが何かの作品を演奏するためには「楽曲を理解し記憶する」ということはいつも重要です。本連載の第4章「音を読む」から第5章「困ったレッスン風景」にかけてはそのための基礎訓練を解説し、実践してきました。重要な点は以下に集約されます。

   1.指使いだけで曲を覚えないこと
   2.いつでも何の音を弾いているのか認識できること
   3.指使いは自分自身で見つけること

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 「理解」には二つの種類があります。ひとつは「楽譜を即座に読み、理解する事ができる」ということ、もうひとつは「楽曲の本質的な音楽を見つけ、それを理解する事ができる」ということです。ここでは前者の能力についてお話ししましょう。
  「楽譜を即座に読み、理解する事ができる」ようになるためには「初見演奏」の訓練を積み重ねることによって効率的に身につける事ができます。その手続きを具体的に説明いたしましょう。
 まず何でも良いですから本棚かな楽譜を取り出して下さい。いくつもの曲が収められた「曲集」がよいでしょう。昔買って、あまり弾くこともなく眠っていたような曲集が良いでしょう。そして適当にどこかのページを「エイ!」と開きます。そこにある曲が、今日のあなたの課題です。いいですか? けっして選り好みをしてはいけません。

   1.まず曲全体を見渡して下さい(→どれくらいの長さの曲ですか?)
   2.調性と拍子を確かめます(→ハ長調? ホ短調? 四拍子? 三拍子?)
   3.発想記号をみます(Allegro? Lento? 何も書いてない?)

 ここまでの作業に一体どれ位の時間がかかるでしょう? どんなにのんびりした人でも、数秒もあれば十分でしょう。さあ! すぐに弾き始めて下さい! もしも「Vivace 四分音符=140」なんて快速の音楽であったとしても、それは無視して、最初は技術に余裕があるようにゆっくり、あるいは「スローモーション」と言えるようなテンポでも構いません。今一番大事な事は・・・

「止まらず」
「可能な限り楽譜通りの音を出してみる」

・・・ことです。そしてできることなら途中にある「dolce」とか「poco rit.」なんていう音色の変化やテンポの変化の指示は無視する事なくやるようにして下さい。決して止まったり、弾き直しては行けません! これは仮想の「演奏会」です。
  さあ、あなたの頭の中には沢山の血液が流れ出しました。もしかしたら緊張してるかもしれません。この状況は、…引き返す事のできない断崖絶壁をゆっくりと歩き出したようなもの、…摩天楼のビルとビルの間に張ったロープの上を一人で綱渡りしているようなものかもしれません。しかし同時に、あなたはとても「集中」しているはずです。そう、練習をする時にはこのような「集中力」が極めて重要なのです。
  さあ、弾き出して下さい。目に見えない満席の聴衆はあなたが弾き出すのを今か今かと待っていますよ。そして、もしかしたらあなたが今弾こうとしている曲は、世界で誰も弾いた事のない曲かも知れません。ということは、今あなたが弾くと、それは「世界初演」かも知れないのですから、責任は重大です!
  …いかがですか? 上手く行きましたか?  この練習方法を【課題6】として例を示したが、勿論いろいろな曲でやって下さい。毎日の練習でかならず、何曲かやってみるようにしましょう。運悪く難しい曲に当たったときでも、くじけず最後まで弾き通しましょう。また、とっても易しい曲に当たったときは、より完璧な演奏するように心がけましょう。目はいつも楽譜の「演奏しているところ」よりも「先を見る」そして「読み」何でも良いから即座に読みとった情報を「記憶」する、という訓練です。最初のうちは読み取る量は「音1個」から初めても構いません。それを少しずつ増やして行って下さい。


【課題6】 任意の楽曲で以下のような楽譜の見方とその演奏のやり方を練習しなさい
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   次回からは再びテクニックの問題を考えてみます。

 

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