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《続・独習者のためのステップアップ講座》
by Shingo Fujii
guitarstudy
shingo

CHAPTER 5.
困ったレッスン風景

5-1
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第2節. “困ったレッスン風景”

  本連載は特定のレベルの方を対象にしている訳ではありませんが、編集部からのリクエストは「独習者」ということでした。しかし実際には、教室に通って先生に習っている人、あるいはプロを目指して頑張っている人など、様々な方にお読みいただいているものと思っております。そこで独習者の方にこんな質問をしてみたいと思います・・・。
   レッスンの時に先生が・・・

「ここはこのように弾いてみなさい、そのためには その指ではなく
この指を使った方が良いですよ」 ・・・

というアドバイスをしたら

「・・・先生できません、家に帰ってから練習してきます」

・・・という答えが返ってきました。勿論、特殊で、複雑怪奇な指使いならば戸惑い、家でじっくり練習しないと弾けないという事はあり得るでしょうが、極めて単純で、簡単な運指の場合でもです。さあ、あなたはどうですか?  もうひとつの光景です・・・

「さあ、それではここから弾いてみて下さい」

・・・と楽譜を指差すと、しばらく考え込み・・・

「・・・もう少し前から弾いても良いですか?」

・・・と、何十小節も前の、大きな楽節の区切りから弾き出してしまって、先生に言われた箇所にたどり着いた頃には、一体何処の何を指摘されたのか解らなくなってしまいます。似たようなケースで、メロディーだけを弾いたり、あるいは伴奏部分だけを弾いたりという事が出来ない人がいます。あなたはどうですか?
   こういう事が起こるのは殆どの場合「曲を指使いだけで覚えている(理解している)」から、というのが理由です。ではなぜ指使いだけで覚えてはいけないのでしょうか? そういう覚え方をすると、曲を理解しなくなるからです。また別の指使い、すなわち別の表現方法を探し出す可能性も閉ざされてしまいます。

 

lesson

ホセルイス先生のレッスンをうける筆者(1985年頃?)


  本稿のタイトルには「ステップアップ」という言葉が冠されていますが、どのようなレベルの人でも、本当にステップアップするためには指の記憶を磨き上げる事にのみ腐心するのではなく、楽曲を記憶しその理解を深めることができなければなりません。第4章(CHAPTER4)からここまでは、そのことの基礎練習、準備を行ってきました。

 

・・・「音を読む」ということを考えていて、つまり私達が楽譜を読むという事を通じて、はじめて音楽と接するという事を説明したかったのですが、そのことからやっとテクニックの勉強が始まるというところまでは、十分に説明が出来なかった様です。・・・でもそういう観点からもう一度読み返していただけると幸いです。「困ったレッスン風景」というタイトルと内容は、いささか愚痴っぽく聞こえたかもしれませんが、とくにプロの演奏家を目指すなどという若い人には、こんなことがあっては絶対上達出来ませんよ、という警告だと思って読んでいただきたいと思います。(藤井眞吾/2012年5月27日)