2009年7月の Diary

2009

 
※「Diary(日記)」は藤井眞吾のギター・ココログでご覧下さい
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悲歌的幻想曲

2009年7月25日(土)

九州を始めとした西日本各地で集中豪雨の被害が報じられて、山口県や北九州、福岡、佐賀、長崎などにいる知人・友人を心配しながらの一日でした。京都地方も昨夜は瞬間的に凄まじい勢いで豪雨が、日中も午前中は雨が降って演奏会を心配したのですが、夕方からは天気がなんとか持ってくれました。開場のアートステージに到着するなり、エアコンをフル回転で稼働して温度と湿度を下げました。
今回は19世紀のオリジナルギター作品。楽器はブッヘルではなく、三浦隆志製作(1989) のギター。柔らかな音色が表現の幅を支えてくれます。今回もジュリアーニの技巧的で華やかな大作ではなく、サロン風の瀟洒な小品(アイルランド民謡、嬉遊曲)をお聞きいただきました。ソルの「悲歌的幻想曲」はいつ弾いても弾き終ったあとに、精も根も尽き果てる感じがします。勿論それはこの作品が持つ哀惜の念や、追悼の悲しみ、永遠の別れ、といったものから来るものだと思います。でも本当に美しい曲です。また、いつか演奏したいと思います。
 来月は《2009年の夏〜ギター小品集》 と題して、古今の良く知られた小品や、私がギターのために新に編曲した小品などを演奏します。どんな作品をお聞きいただけるかは近々発表いたします。お楽しみに! それからこの日は会場のアートステージ567で展示会が同時開設されておりますので、そちらもお楽しみ下さい。

 

 


I'll be back !

2009年7月19日(日)

今年もトマトは順調に育っているのですが、こいつもまたやって来ました。スズメガ科の一種らしいのですが、とにかくデカイ。トマトの葉っぱを食べまくって、枝がすっかりつんつるてんになって、こりゃおかしい、と思ったら案の定、またこいつが今年もやってきました。昨年は11月に発見して、その姿のあまりの奇異さに写真を Diary にアップしたのですが、もう今年はそんな気分にはなれません。このままじゃかわいいトマトが全滅してしまうとばかりに、退治しようとしたのですが、身体もデカイが、トマトの枝にしがみつく力も半端じゃあない。しかもこちらが攻撃すると、チッチッチ、とマラカスを小さく揺らしたような鳴き声を立てるから不気味です。大きさを示そうと煙草を差しだして写真をとったのですが(煙草の種類は Lark ロングサイズ)、腰が引けてしまって、煙草は遥か手前に。だから遠近法の関係で、あまり大きさをお伝えすることが出来ていませんが、その辺は推測してみて下さい。また来年も「I'll be back !」と言っていそうです。

 

 


もうすぐ今月のコンサートシリーズ

2009年7月17日(金)

なかなか京都地方は梅雨が明けません。祇園祭真っ最中です。今月のコンサートシリーズ vol.34は「悲歌的幻想曲」と題して行います。言うまでもなくF.ソルの晩年の名作「Fantaisie Elegiaque, Op.59」のことです。この曲は先月の STUDIO 73 でも演奏したのですが、このときは19世紀のオリジナルギターでお聞きいただきました。この曲はソルが生徒であり親友のベスレイ夫人の死を悼み作曲したものですが、その表現の微妙なニュアンスは演奏者に多くのことを要求してきます。ですから今回はオリジナル楽器ということにこだわらず、本来の愛器「三浦隆志(198)」で演奏します。古典派と浪漫の作品が中心です。時間があれば GuitarStudy のコーナーにもこの作品(悲歌的幻想曲)について少し書いてみたいと思っています。そのほかには「嬉遊曲 Op.78(M.Giuliani)」「 序奏と華麗なロンド Op.11(J.K.メルツ)」「アンダンテ Op.38(N.コスト)」などです。他にソルの変奏曲を弾くつもりですが「マルボロー〜」にしようか「魔笛〜」にしようか・・・、と悩んでいるところです。尚、主催のマンサーナでは「祇園祭を祝して」と言うことで三名のご招待企画を計画中です。サイトをご確認下さい。

 

 


我々はどこから来たのか

2009年7月16日(木)

面白さ、とか愉快さ、というのはふっと緊張が解けた瞬間にやってくる意外さに発見することが時々あります。それは作為ではなく、偶然の産物、だからこそ面白い、しかしそれはそこに居合わせたものにしかわからない、というものでもあります。昨日京都芸術大学で学生達の力作を沢山観賞して、さあ帰ろうと思ったとき、建物の影にベンチが置いてあり、そこに灰皿があるから一服しようと腰を下ろすと、目の前にご覧のような「ゴーギャン展」のポスターが。タイトルは「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか?」といかにも哲学的な言葉。Lark に火をつけ、ふっと一息つくとポスターの「ゴーギャン」 の「ゴ」の文字の中に、何か黒いものが見える。よくよく近づいてみると、こんな奴がいる。じっとして動かない。「お前はどこから来たのか、お前は何者か、お前はどこへ行くのか?」と問いかけてみたら、無性に可笑しくなってしまった。

 

 


作品展示

2009年7月15日(水)

今日はレッスンもなく休みだったので、長女が行っている京都芸術大学に作品展示会を見に行って来ました。この写真が娘の作品、そして娘と私です。「大学に来るときは、あのTシャツを着てきてね!」と言われていたので、先日誕生日プレゼントにもらったTシャツを着ていくと、学内で会う人会う人に「あ!」と言われて、娘はこのTシャツの絵を大学で描いていたらしく、皆がもう良く知っていたのでした。結局私は「歩く作品展示」をさせられました。・・・なんともはや。

 

 


重奏の会

2009年7月12日(日)

昨日の初演の興奮が醒めやらないまま、今日は朝から公開レッスンです。本来は富川ギター教室主催による発表会「重奏の会」なのですが、それに先駆けて四人のレッスン。また発表会の中で先日出版したばかりの「はじまりの音楽」を一緒に演奏させていただきました。一月前にやはり公開レッスンという形で勉強をしてもらい、約一ヶ月間それぞれに練習を続け、今日はリハーサルを一回して本番でしたから、生徒の皆さんには厳しい状況であったかもしれませんが、皆とても良く出来ました。この曲集がギターの、そして音楽の勉強教材として極めて有効であるという確信を得た気がします。富川教室のこの日の企画は「重奏」を基幹にしたもので、こういった勉強の仕方は非常に良いだろうと思います。また「はじまりの音楽」やその後の私のミニコンサートへ駆けつけて下さった皆様、有難うございました。ひじょうに長丁場でしたが、とても楽しかったです。その後の目白での打ち上げも、まるで富川教室益田教室の合同コンパのようで、賑やか、楽しかったです。詳細なレポートが富川氏のブログや、受講生の一人であった尾野桂子さんのブログに報告戴いておりますので、ご覧下さい。

 

 


地平線の協奏曲 HORIZONTAL CONCERTO

2009年7月11日(土)

独奏ギターとマンドリン合奏のための「地平線の協奏曲」が本日、7月11日に初演されました。 立派な演奏でした。特にソリストの益田正洋さんは決して容易ではないこの曲を、見事に、そして音楽を十全に表現してくれました。その音の美しさは素晴らしかったですし、三楽章の難しいパッセージも見事でした。マンドリン合奏団のアンサンブル・モニカの皆さんも二週間前の練習から、おそらくとても練習をして戴いたようで、見違えるような演奏でした。このように私の新作が産声を上げることが出来たのは皆様のお陰です。今回私が嬉しかったもう一つのことは、オーケストラがマンドリンという私にとっては決して熟知しているとはいえない楽器のための音楽だったので、果たして実際の響きがどうなるだろうかという不安が少なからずあったのですが、本番の演奏を聞きながらそれは全く杞憂であったと思えたことです。終演後の打ち上げ会も楽しく、また益田君を囲んでの二次会も楽しく、本番の写真は来月発売の現代ギター誌でご覧戴くとして、リハーサルと打ち上げ会の写真ばかりですがをアップしましたのでご覧下さい。益田君と「はじまりの音楽」も披露しちゃいました!

 

 


解説脱稿

2009年7月10日(金)

はじまりの音楽全12曲の解説を脱稿しました。ご覧戴けるなら幸いです。音楽に込めた様々な思いや仕掛けを、こうして文章に置き換えてしまうと、どこか空々しいものを時として感じてしまいます。解説などというものは程々にしておいたほうが良いのかもしれません。皆さんも程々に読んで下さい。音楽は「音のなかにのみ存在する世界」です。如何なる麗文も追いつきません。また表現するものが違います。この曲集はこれからも色々な機会に、実際に演奏をお聴きいただいたり、またレッスンを通じて勉強していただける機会が、各地であるだろうと思います。その時が来ることを楽しみにしています。先ずは12日、東京の雑司が谷音楽堂でありますから、是非そちらを聞きに入らして下さい。この日の公開レッスンの受講生及び受講曲の連絡がありました。また明日は船堀タワーホールで、新作コンチェルト「地平線の協奏曲」の初演が、益田正洋さんとアンサンブルモニカの皆さんによって初演されます。こちらも是非聞きに入らして下さい。私は今から荷物をまとめて、東京に出発します。

 

 


MOT,Tコンサート

2009年7月8日(水)

もう五日に終ってしまった演奏会なのですが、東京で「MOT,T」という三人の若いギタリストによるコンサートが行われました。このコンサートで私の「リバーラン RiverRun」という三重奏曲を演奏して下さいました。先日富川ギター教室の主催でアンサンブルを中心とした公開レッスンでその三人のレッスンをしたのですが(写真左より、尾野桂子さん丸山耕太郎さん、多治川純一さん)、演奏者が曲を楽しんでくれている様子でとても嬉しかったです。 私が作った曲ですから、楽譜を通じて伝えきれなかったことや、また彼らが楽譜からまだ読み切れなかったこと、あるいは作曲のプロセスなどをお話することは出来ますが、それ以外は作曲者だからといって特別なことがあるわけではなく、レッスンの中でも彼らはとても良く反応してくれ、楽しいレッスンでした。・・・そして彼らの演奏会が五日に行われ、その報告が尾野さんのブログに報告されていますので是非ご覧下さい。 また今度の日曜日(12日)は再び同じ主催者で、池袋から近くの雑司が谷音楽堂で公開レッスンや発表会、私のミにコンサートなどがありますが、「はじまりの音楽」も生徒の皆さんと全曲演奏します。

 

 


岡野貞一の二つの名作

2009年7月7日(火)

 私の小学校には音楽教室が二つあって、古いほうは木張りの渡り廊下のむこうに、古びたオルガンとあり、新しいほうは新しい校舎の二階にピカピカのアップライトピアノとありました。あっちに行ったりこっちに行ったりしながら、先生の弾くオルガンやピアノに合わせて頌歌を歌っていましたが、この歌はその古いほうの音楽教室で歌ったような気がします。それまで歌っていた歌に比べると、格段に「大人」になったような気がしました。「入り日薄れ」や「霞深し」なんて言う言葉使いがそういう気分を醸し出していたし、なによりもこのアンニュイな情景描写が「大人だな〜」と言う気分にさせました。
 しかし今になって思うと、そういう気分を作りだしていたのは歌詞のせいだけではなく、旋律の動きがそれまでのシンプルな上がり下がりだけでなく、下降や上行、さらには三度、四度、五度など様々な音程があって、そこに(小学4年生や5年生)までには許されなかった「大人の入り口」を感じていたのかもしれません。 (続きを読む)

 

 


「たこたこ上がれ」と「たこの歌」

2009年7月6日(月)

凧凧 あがれ
天まで あがれ
・・・と歌われるこのわらべ歌は、たった二つの音(「ラ」と「ソ」)から成る、いたってシンプルな民謡だが、実はこれを「洋風に」アレンジしたと思われる「凧の歌」という文部省唱歌が明治43年の「尋常小学読本唱歌」にみられる。歌詞はこうだ・・・。

たこたこあがれ 風よくうけて
雲まであがれ 天まであがれ

・・・これは完全な長音階で出来ている。勿論この曲集ではよりシンプルなわらべ歌の旋律を用いた。みじかな旋律を先生と生徒が交互に合計四回演奏し、度々に転調し高音域に上がっていきます。最後は綺麗なハーモニックスで、見事に大空にに高々と上がってください。(続きを読む)

 

 


京都? 大分?

2009年7月5日(日)

羽根つきをしながら歌う京都地方の民謡(遊び歌/数え歌)であると「わらべうた(町田嘉章/浅野建二 ):岩波書店」としていますが、大分県宇佐地方の民謡であるという説もあります。宇佐は古くから都との関わりの深かった土地ですから、その影響であるのかもしれません。

本曲集で採用した旋律はまさに京都地方の言葉のイントネーションを如実に示しています。ここでも言葉に沿ったアーティキュレーションとその奏法を探して下さい。私が書いた運指はあくまでも「参考」に過ぎません。(続きを読む)

 

 


すごい、木村カエラ

2009年7月4日(土)

この一週間とっても気になるCM音楽があるのですが、月曜日に東京から帰ってTVをつけると流れてきたコマーシャルがこれ。最初はどこかの無名のバンドの女の子を連れてきて安上がりに作ったコマーシャルなんだろうと思ったら、その聞こえてくる「ホットペッパピップペッパッピ ペッパペッパピップペッポッピ ・・・」という他愛もない歌声が、とても気持ち良く、軽快なリズム。しかも良く聞くとアカペラなのにとんでもなく音程が良い・・・。「世の中には才能のある若者がいるもんだな・・・」と聞き惚れていると、このコマーシャルが無性に気になる。流れるたびに惹き付けられ、聞き入ってしまう。女房に聞くと、この子は「木村カエラ」という超有名な歌手だそうで、そう聞いた瞬間「なんだそうなのか・・・」とちょっとがっかりしたけれど、そんなことはどうでもいい、このリズム感の爽快感、そしてハーモニーから寸分も外れることなくさりげなく歌われる歌声の音程の良さ・・・。クラシックの音楽家ではめったに聞けない鮮やかさ・・・。上手いな。この曲もこんなふうにさりげなく演奏したいものです、リズムとメロディーの練習です。

 

 


草川信「ゆりかごの歌」

2009年7月3日(金)

私達の国で愛唱されている子守歌はいろいろありますが、この草川信による「国産子守歌」は代表的なもののひとつでしょう。草川信(1893〜1948)は長野県出身の作曲家、「ゆりかごの歌」は1921年に発表され、そのほかに「夕焼けこやけ」「汽車ポッポ」などが知られます。

1st ギターの旋律は子供が眠りに就くことが出きるように、いつも柔らかく、綺麗な音で演奏します。歌詞に沿ったアーティキュレーションを考えて下さい(・・・このことはこの曲集全体では共通した課題です)。たとえば 2nd ギターの伴奏なしで、まず旋律だけを弾いて、その音色から
  「ゆ〜りかご〜の う〜たを〜 ・・・」
と、まるで声で歌っているかのように。(・・・続きを読む)

 

 


「はじまりの音楽」解説

2009年7月2日(木)

この曲集は極めて単純に「先生と生徒が音楽を楽しむために」作った曲集なので、もっと親しみやすく、平易な文章をと思っていたのですが、出版の準備に追われる中、私の脳裏に浮かんでくるのは、文部省唱歌の特異な生い立ちやそれらの数奇な運命、日本音楽の特殊性とこの編曲の関係、そして私自身がこう言った音楽に積極的に取り組むようになるまでの長い時間の経緯が、何度も何度もよぎり、硬いということは覚悟で、皆様にお伝えしなければいけないことをひたすら書き綴ったという記憶があります。
 発売直後から沢山の方々からの反響が私の元に届き、また私自身も自らの生徒のレッスンに使用しながら、曲集の中には書ききれなかったこと、また作曲/編曲者と言う立場よりは演奏する立場からの、いくつかのお話を皆様にお伝えしたいと思い、このサイトに書くこととしました。 この曲集を楽しむために、少しでもお手伝いが出来ればと思っております。
藤井眞吾(2009年7月)

 

 


「はじまりの音楽」を全曲演奏します

2009年7月1日(水)

来週の日曜日(12日)、東京の目白からほど近いところにある雑司が谷音楽堂というところで富川ギター教室の重奏発表会があり、私はゲストとして出演しますが、主な目的は先月の公開レッスンで行った成果の発表です。「はじまりの音楽」は勿論全曲をお披露目する予定です。さあ、一ヶ月間で富川教室の皆さんはどんな成長を遂げているでしょうか! 楽しみです(・・・と書いてしまうと皆さんにはプレッシャーかな? いや、そんなことはないですね、みんなで楽しみましょう)。なんだか最近・・・、先日の上海ではコンサートのプログラムが殆ど私の作曲作品や編曲作品だったし、今回も東京でこんなにまとめて私の作品を演奏いただくなんて・・・。なんだか生きながらにして「追悼コンサート」してもらってるような気分、・・・ではなく、本当に有り難いことです。以前はこんなことは考えてもみませんでした。でも「はじまりの音楽」は本当に各地でやりたいです。そういえば、山口県の吉岡先生も「はじまりの音楽」のことをブログで紹介して下さっていました、有難うございます。ところでこの日の発表会では、午前中に四名の公開レッスン、そして最後の第3部では私のミニコンサートがあります。入場料は無料だそうですので、お近くの方は是非聞きにいらして下さい。主催の富川教室はなかなか豪気です。

 

 


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更新2009年8月4日

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