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Nocturnal
by B. Britten

二つのエリザベス朝

 イギリスのルネッサンス時代にはエリザベス女王(I世)が在位、J.ダウランドが活躍。現在のエリザベス女王(II世)の時代にはB.ブリテンがいました。共に時代を代表する音楽家です。ダウランドはリュート(Lute)の名手でもありましたが、ブリテンは20世紀のリュートとギターの名手、J.ブリームのためにダウランドの作品をもとに、かつてないほどの規模と内容のギター独奏曲を書いたわけです。

ノクターナル Op.70(1964)

 ギター独奏のための「ノクターナル Op.70」は変奏曲の形をとり、主題はJ.ダウランドのリュート歌曲集(第1巻)の第20番「来れ深き眠りよ Come Heay Sleep」。古典的変奏形式では主題が真っ先に演奏され、続いて変奏が続きますが、ブリテンの作品70番では8つの変奏が先ず演奏されます。

I. 瞑想するように Musingly
II. 非常に興奮して Very Agitated
III. 休み無く Restless
IV. 不安げに Uneasy
V. 行進曲のように March-like
VI. 夢見るように Dreaming
VII. 優しく揺れて Gently rocking
VIII. パッサカリア Passacaglia (measured)

それぞれの変奏部分は主題の中にある旋律の断片やリュートによる伴奏部分からの断片を「素材」として構成されています。それぞれの手法や素材の活用の仕方は20世紀後半の音楽にあっては殊更新奇なものではありませんが、ギターのために書かれた作品の中にあってはひときわ異彩を放っています。また1964年に作曲されたこの作品はそれまでのギター作品には見られないほど規模が大きく、また全体が立体的な構造を持っています。最後の変奏になる「パッサカリア」が主題に流れ込む、音楽的力強さや美しさは、全く新しいギターの音楽であったし、数多くのギタリストや作曲家達に、ギターの持つ限りない表現力を示したことも忘れられません。