Nocturno sobre "El Cant dels Ocells" para
3 guitarras
~「夜想曲~鳥の歌による」ギター三重奏のための
6.M.マグダレナのパッサカリア
富川君、大島君、栗田君へ
「6.M.マグダレナのパッサカリア Passacalle de Maria Magdalena 」は完全に独立しているのではなく、前の変奏「5.鳥達のマズルカ Mazurka
de los Pajaros」と対になっていることは容易におわかりいただけると思うのです。実はこの二つの変奏全体で、私は「ロンド形式
Rondo」だと考えています。つまり「A1-B-A2-C-A3」という形はオーソドックスなのですが、調関係や各部分の長さはきわめてアンバランスです。
「A1=183~191(Mazurka)」
「B=192~203(Ebの部分)」
「A2=204~211(Mazurka)」
「C=212~305(Passacalle)」
「A3=306~319(Passacalleのコーダ部)」
・・・という構成です。
パッサカリアの部分はバロックのような、・・・クラシックな音楽です。ですからどのように演奏すればいいのかは、特に説明の必要はないでしょう。3rd
が最初に弾くメロディーは言うまでもなく「鳥の歌」のメロディーです(・・・そのように聞こえないかもしれませんが)。244小節では明らかにそれとわかるようにテーマが出てきます。これは明確に、力強く聞かせて下さい。260小節からはそれが
2nd ギターに移ります。ここまでのベースと中声部は意外に演奏が難しいかもしれません。
276小節でテーマの旋律が 1st に移りますが、テンポは「un poco piu mosso」で少し早くなります。これは「義務的に」速くなるのではなく、ドラマのラストシーンが近づいたときの興奮のように、少しですが明らかにテンポが速くなったと言うくらいの変化です。284小節では
2nd で大事なことが始まります。それはこの奏者がこの曲の一番最初(prologo del sueno)で提示したモチーフです。高音にある音をやや硬質に、そして全体の響きに埋没しないようはっきりと弾いて下さい。
292小節は「ancora, piu mosso」、すなわち「再度加速」です。クライマックスが近づいている証拠です。ゼクエンツァのように同じ音形を繰り返してたどり着くところは再び「Mazurka」。でもこのマズルカはたったの2小節で、すぐにまた「夢」の中に意識が潜り込んでいくように、そして遠い記憶をたどるように。観たことのある風景、聞いたことのある音が再現されて、最後には「鳥の歌」が聞こえてきます。
ところでタイトルとなった「Maria Magdarena」は15世紀ポルトガルの女王の名前。イタリアからやってきたチェンバロの名手、ドメニコ・スカルラッティはこの人にチェンバロ教師として終生仕えました。そしてスカルラッティにとって彼女は単に「女王」というだけでなくプライベートでも、きわめて重要な女性であったそうです。「パッサカリア」はスペイン語では「Passacalle」、つまり「Passar」「calle」で「道を通る」。その昔は「行進曲」であったそうです。「我が道」を突き進んだスカルラッティとマグダレナへの賛歌です。
藤井眞吾 (5/5) |