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《夜想曲 ~鳥の歌による》
Nocturno sobre “El Cant dels Ocells”
by Shingo Fujii

Nocturno sobre "El Cant dels Ocells" para 3 guitarras
~「夜想曲~鳥の歌による」ギター三重奏のための

vadf3.飛翔

富川君、大島君、栗田君へ

 「モチーフ」のことを中心にお話をしていますが、この楽章「3.飛翔 Vuelo」の冒頭も実は「モチーフのみ」でできていることにはすぐにお気づきでしょう。まず 2nd guitar(富川)の反復音形は「motif C」です。3rd guitar(大島)の旋律は、「motif A」で「イ短調」から「ト短調」のへと移行しますが、それはすぐに「ハ長調」に転じます。
さて1st guitar(栗田)ですが、ここでは「C+F=完全四度」「B+E=完全四度」でこれも「motif A」の冒頭二つの音の音程を利用したと説明できなくもないのですが、実際にはそんなことより、鳥の群れがわさわさと飛び立つような効果がほしかったので、書いたアルペジオの音です。
 5小節目から3rd guitarが二つの和音を繰り返す中、1st は 2nd の奏でる主題旋律を追いかけます(再びカノン)が、実はここでは1st と 2nd は全く別の key で演奏「1st = イ短調」「2nd = ニ短調」、すなわち「複調」の音楽なのです。ということは 3rd は「ハ長調」ですから、三つのパートが三つの調性で音楽をする「複・複調(・・・そんな言葉があるのかな?)」ということになります。複調の音楽の特徴はぶつかり合う音の緊張です。力強いながらものどかな響きの 3rdとは対照的に、1st と 2nd は互いの調性を強烈に主張しあってください。
 108小節目からは今度は1st と 2nd が一定の音形を繰り返します。そして 3rd は「ヘ短調 F minor」で主題後半の旋律を演奏しますが、ここも言うまでもなく全体の調性はひとつではありません。「激しい喧噪」が感じられるはずです。そして最後の四小節ではまた冒頭と同じ「複調」にもどるのですが、さきほどの甚だしく離れた調性による「喧噪」にくらべれば、ここははるかに落ち着いて、しっくりと収まる、まるでひとつの「調性」の中で音楽をやっているように聞こえませんか?
 もう一つテンポの問題です。前の楽章「2.逆さまのレセルカーダ」では、テンポの指定はしませんでしたが、リチェルカーレが本来声楽曲をもとにした器楽曲であることから、そのテンポは自ずと「歌うことができるテンポ」の中で考えられるのに対して、「3.飛翔 Vuelo」は完全に器楽的です。可能な限り力強く、生命感を感じさせるテンポで演奏してください。

藤井眞吾 (4/30)


 
 
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