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David Russell デイビッド・ラッセルと私
2004年10月12日

6

●10/8日「大阪~リサイタル」

 続編はなし・・・、と思っていましたが書かずにはいられない気持ちが高まって、少しだけお話しようと思います。

 10月8日、とうとう David の2004年ツアーがスタートしました。大阪でのリサイタルは素晴らしい演奏でした。演奏のあらゆる所に、成熟の香りとでも言うべき「円熟」の味わいを見せていました。最初のテデスコ(悪魔の綺想曲)ではまさに巨匠の演奏と言うべき内容で、この作品が技巧的にだけではなく表現としても相当に難しい曲であるということをすっかり忘れさせてしまいました。続くバッハの2曲のコラールは演奏者自らがその安らぎの音楽を楽しんでいるかのように演奏していました。マンホンの「バスクの調べ」はかなり昔のCDにも収録している曲ですが、作品のもつ即興的な音楽の流れがより一層自然に聞かれたように思います。と言ってもこの曲、相当の難曲、尋常なテクニックではありません。前半の最後はアルゼンチンの音楽、有名なラミレスの「アルフォンシーナと海」そしてファルーの「兵士の歌」。この2曲に関してはあとで触れましょう。

 後半はやはり以前のCD「バロック音楽」に収録してその名を知らしめるきっかけとなった自編のヘンデル。あとで聞いたことなのですがデイビッドは1996年からM.ダマン作のギターを弾いていますが、それには色々な理由があってのことでしょうが、こういったバロック作品を聞いていると、いつも安心して聞こえてくる低音が、その理由のひとつを語っているように思えました。20年前はこの作品を弾くために必要な技巧のひとつひとつが私の耳に強烈に聞こえていたような気がするのですが、今はより自然な音楽の流れと、その集中力が聴衆の心を捉えて離しません。ウォルトン「5つのバガテル」は今回のプログラム中、私が最も意表をつかれたものでした。J.ブリームの強烈で個性的な演奏が耳にこびりつていたということもあって、以前のデイビッドの演奏はこの作品の特徴的な部分が描き出されていないと思っていて、実はあまり期待はしていなかったのです。ところが今回はこの作品が持つ叙情的で、官能的ですらある音楽の表情を、とりわけ旋律を、余す所無く、そして濃厚に聞かせて見事な「もうひとつの名演」を聞かせてくれたからです。前半と同様、後半でもプログラムの最後を飾ったのは南米の音楽でした。D.レイスの音楽はストレートにデイビッドの音楽家としてのハートに訴えるようです。前半のアルゼンチン音楽と同様、演奏者は自らが持つあらゆる手だてを駆使して、そして全身全霊でこれらの音楽を私たちに聴かせるという印象が、私には強く残りました。そのことはテデスコやヘンデル、そしてウォルトンでも寸分変わらないのですが、デイビッド・ラッセルという当代随一のギタリストが、まさに彼のリサイタルプログラムの最後にこういった音楽を配し、そこにリサイタルの頂点を持ってくる。いやもしかしたらそれは頂点ではないのかもしれないけれども、仮に反論があったとしてもこれらの音楽で彼が無防備なまでに自分の心を開いて演奏していたように私には思えるのです。

 アンコールではマラッツ(スペインセレナータ)、グラナドス(スペイン舞曲11番)、バリオス(舟歌)、バリオス(最後のトレモロ)。秀逸!

 

*写真は大阪でのマスタークラス
上より・・・

デイビッドラッセル氏
坂本和穂君
猪居謙君

(2004年10月12日)
つづく

写真提供/Manzana