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更新:2005年4月6日

曲目について-3

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藤井眞吾 ギターリサイタル〜ギターのための小品集
すべては薄明のなかで [4/14 in BIWAKO & 4/21 in TOKYO]
【曲目について by 藤井眞吾】

3.舟歌とアレグロ・シンフォニコ(A.バリオス)

 「舟歌」は全音版によれば二つの版が見られます。ひとつはタイトルとして「フリア・フロリダ Julia Florida」の曲名が見られますが、双方ともに全く同じ曲で音楽としての違いは全くなく、若干の運指の違いなどが散見される程度の差ですが、私は「フリア・フロリダ Julia Florida」とされて方の版の運指により興味を持っています。ロマンティックなスタイルが遺憾なく発揮された旋律は、デリケートな和音の変化と、さざ波のような中声部の動きによってその美しさを一層魅力的な光を放っています。中間部の劇的な変化はまるでオペラの中のアリのごとく、朗々と美しく、ギターという楽器がなしうる最大の表現を聞くことができるように思います。なぜなら、ギターが持つ最も美しい「ピアニッシモ」がこの曲にはあるからです。
 スペインのエステージャ Estella という、「牛追祭り」で有名なパンプローナにほど近い田舎町でホセルイス・ゴンザレス先生の夏季講習会が毎年行なわれ、1985年私は参加しました。一週間か二週間開催される講習会期間中に、近郊の音楽学校のホールや教会で先生が演奏会をされます。聖堂に入るとまるでそこには、まだ中世の空気が残っているのではないかという教会で、前半はソルのファンタシアで始まり、あとはこの「フリア・フロリダ Julia Florida」を含むバリオス作品が6曲演奏されましたが、この時の何とも言えない美しい演奏は忘れられないものでした。私はこの曲を弾くたびにその時のこと、その時の情景、そして先生の演奏姿を思い出します。
 バリオス自身のギターの生徒であった女性のために作曲されたこの作品を、バリオスは彼女のためにのみ演奏し、決してコンサートで弾くことはなかったといわれるこの作品には、幸福に満たされた美しさと同時に、何か切ない、やるせなさ、あるいは慟哭とも思える深い悲しみを感じ取ることが出来ます。それが何故なのか、何なのか、思いを巡らすこともしばしばあります。
 「アレグロ・シンフォニコ algro Sinfonico」はあまり演奏されることの無い作品です。民族的な色合いが殆どない作品だからかもしれません。バリオスの作品は大別して「1.南米の民族音楽を基調としたもの」「2.純粋な器楽音楽(クラシック音楽)」そして「3.教育を目的としたと思われる練習曲」と三つのジャンルに分けることが出来ます。「3.」もスタイルとしてはその殆どが「2.」に含まれると言っていいでしょう。
  「1.南米の民族音楽を基調としたもの」の代表的なものとしては「郷愁のショーロ」「パラグアイ舞曲」「アコンキーハ」「マシーシャ」等が挙げられます。
  「2.純粋な器楽音楽(クラシック音楽)」を代表するのは何と言っても「大聖堂」そして「ワルツ(集)」、今回演奏する「舟歌」と「アレグロ・シンフォニコ」もここに含まれるのです。活力と生命感溢れるこの作品は、まるで「青年バリオス」を想像させるような、明るい音楽です。

 


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