gfd
右手の動き
by Shingo Fujii

2.太鼓とバチの関係

 ギターの弦はどのようにはじいても、とりあえず振動してくれます。そしてギターはとりあえず音を出してくれます。そう、それはあくまでも「とりあえず」なのですね。よく観察してみるとどのようにはじいても、弦はすぐに楕円のような軌跡を描いて振動していることが解ります。しかしギターの表面板はひとつの方向にしか振動してくれません。弦は二つの「点」で固定されていますが、表面板は四方が固定されています。つまり「弦はどの方向にはじいてもやがて円形の運動(振動)になる」が「表面板は中央を中心とした平面的な運動(振動)」しかしません。

fds 身近な例で考えてみましょう。「太鼓」あるいは「ティンパニー」をご存知ですね? これを叩いたこともあるはずです。和太鼓のような大きなものになると、ドンという音とともにブルブルと震えている皮が何となく目に見えるはずです。それは太鼓の皮の中心がふくらんだり、へこんだりする、運動の繰り返しです。これは私達がバチをキレイに振り下ろしても、あるいは斜交いに振り下ろしても結果は同じです。でも最も大きな音、はっきりした音を出そうと思ったら、太鼓の皮に対して垂直に素早くバチを振り下ろすべきであると、研究熱心なあなたはすぐに気付くでしょう。

 今私達は「太鼓の皮」にあたる「ギターの表面板」を直接「バチ」で叩くわけにはいきません。そんなことをしたら「バリン!」と悲しい音がするだけです。そのかわり、ピンと張られた「弦」が振動することによって、丁度太鼓の皮を叩くように、弦が表面板を振動させてくれます。しかも弦は弾力があるので、しばらくの間振動し続け、つまり連続してバチが叩き続けるように表面板を振動させてくれます。ということは、実際には、ギターの表面板と弦が一体となって、太鼓の皮であると言うことが解りますね。

 それでは本当の「バチ」は何でしょうか? それは私達の「指」です。指が弦をはじくことが「太鼓のバチ」の動作に当てはまるのですが、実際には太鼓の皮をしたたかに打つ「バチ」のような動作では、美しい音や、その音色のコントロールは難しいのです。この事については別の機会にお話ししましょう。