gfd
《続・独習者のためのステップアップ講座》
by Shingo Fujii
Index

shingoCHAPTER-2
左手の使い方を見直そう

 私の経験では「右手を教える」ことよりも「左手を教える」事の方がはるかに難しいのです。右手の場合は、教わった事を実践してみればすぐに音色が変わったり、音の大きさや質が変わって、解り易く学習者もこちらには興味がわくのですが、左手の場合は窮屈に感じられる事ばかりで、それまでの慣れ親しんだ押さえ方にすぐもどってしまう、という事が多いからです。また、左手の技術は活字で伝えるよりも実際に教える方がはるかに教え易い・・・、それは平面的(二次元)な理解ではなく立体的(三次元)な「空間の理解」が必要だからです。ここでは写真をふんだんに使って説明してみましたが、お解り頂けたでしょうか?

2-1
2-2
2-3

 

第1節「左手の動き」

 左手の動きは、おそらく右手以上に複雑です。きれいな音を出したり、うっとりするような音楽を奏でるのは、右 手の仕事だと思われがちですが、そのために左手がやらな ければならない仕事はきわめてたくさんあり、重要です。そしてその動作も単純ではありません。世界一のプリマドンナでも、村祭りの舞台の上では『白鳥の湖』を舞うことができません。左手は右手のために“最高の舞台”を用意 しなければなりません。
 左手の仕事の複雑さは以下の6 つの要因が絡み合って生 まれるものです。

  (1)弦を押さえる。  
  (2)押さえた時に音を出さなければならない時がある。  
  (3)指が弦から離れなければならない。
  (4)弦から離れた時に、音を出さ【課題2-1】 なければならない時がある。  
  (5)それらの動作は4 本の指で複 合される。  
  (6)さらにポジションを移動しな ければならない。

 (2)と(4)は、いわゆるスラー奏法のことです。1 つ1 つの動作を、 最もシンプルな形で、単純な動作から練習していくことが近道です。
 左手の練習も右手の練習の場合 と同じ理由で、最初はもう一方の 手(=右手)を使わない……、つ まり左手だけで練習した方が良い のです。左手に神経を集中してく ださい。

 【課題2-1】はまず「スラー」の練習です。“指を降ろす(上行 スラー)”と“指を上げる(下降 スラー)”の異なる2つの動作です。最小限の動作であること、指先は垂直に弦を押さえていること、この2点に注意して練習してください。

 

【課題2-1】
2-1

 

 

Chap. 2  
2-1
2-2
2-3