第1節「左手の動き」
左手の動きは、おそらく右手以上に複雑です。きれいな音を出したり、うっとりするような音楽を奏でるのは、右 手の仕事だと思われがちですが、そのために左手がやらな ければならない仕事はきわめてたくさんあり、重要です。そしてその動作も単純ではありません。世界一のプリマドンナでも、村祭りの舞台の上では『白鳥の湖』を舞うことができません。左手は右手のために“最高の舞台”を用意 しなければなりません。
左手の仕事の複雑さは以下の6 つの要因が絡み合って生 まれるものです。
(1)弦を押さえる。
(2)押さえた時に音を出さなければならない時がある。
(3)指が弦から離れなければならない。
(4)弦から離れた時に、音を出さ【課題2-1】 なければならない時がある。
(5)それらの動作は4 本の指で複 合される。
(6)さらにポジションを移動しな ければならない。
(2)と(4)は、いわゆるスラー奏法のことです。1 つ1 つの動作を、 最もシンプルな形で、単純な動作から練習していくことが近道です。
左手の練習も右手の練習の場合 と同じ理由で、最初はもう一方の 手(=右手)を使わない……、つ まり左手だけで練習した方が良い のです。左手に神経を集中してく ださい。
【課題2-1】はまず「スラー」の練習です。“指を降ろす(上行 スラー)”と“指を上げる(下降 スラー)”の異なる2つの動作です。最小限の動作であること、指先は垂直に弦を押さえていること、この2点に注意して練習してください。
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