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ギターを始める

3-NHKのギター教室

 ギターの勉強は、いわゆる独学でした。初めてギターを手にした小学3年生の時から、大学2年生になって岡本一郎先生に習い始めるまでの約10年間が独学です。私の両親には息子達にギターやピアノをわざわざ習わせようという考えはなかったようですし、私自身もそれほど習いたいとも思っていませんでした。何故なら「どうやって弾くのだろう?」と考え、試行錯誤を繰り返して弾けるようになるというプロセスが何よりも楽しかったですし、教則本を呼んだり、セゴビアやイエペスのレコードを聴いたりして、どうやってあんな音が出るのかと探索することも大好きでした。別な言い方をすれば、私は「習う」ということがあまり好きではない、我が儘で自分勝手な子供だったようです。それにいつの頃からだったか、NHKの教育テレビで「ギター教室」と言う番組が始まって、毎週土曜日の夜には阿部保夫先生のレッスンを見ることが出来たわけですから、自分は独学なのだと、あまり感じていなかったのかもしれません。

 TVのギター教室では何と言っても阿部保夫先生が強烈な印象で残っています。阿部先生はレッスンの最中でも、いろいろな曲を弾いてくれたので、番組を見る興味は「今日は何を弾いてくれるんだろう?」と言うところに集中していたように思います。レッスンの合間に聞かれる「東北弁」に親近感を感じました。他の先生では、京本輔矩先生が印象的でした。というのは私の勉強していた教則本の著者だったからです。とても音が綺麗でした。それからカメラが京本先生の右手をアップにすると、写真で見たA.セゴビアの右手にそっくりだったのには驚きました。たしか半年ごとに番組が一旦終了して、あたらしい生徒でまた最初から勉強を始めるというふうになっていたと思Shomuraうのですが、そのひとつのタームが終了するときの「終了演奏」はことのほか楽しみでした。奥田弦正(ひろまさ)先生が弾かれたアルベニスの「グラナダ」はとてもすてきな演奏で、今でもよく覚えています。この番組はかなり長く続きました。荘村清志さんが先生になられたのは、私が大学生になったころだったと思います。荘村さんや渡辺範彦さんの登場は私達には衝撃的で、おそらく現在のギター世代を築き上げる源泉ではないかと思います。

 中学生の時に何故か音楽の授業にギターがありました。と言っても先生は全然弾けませんでしたから、一体何のためにギターを弾かせようとしたのか、今でも解りません。オルガンや他の楽器と一緒に合奏をやったと思うのですが、さっぱりつまらないものだったと思います。でも音楽の先生で「チビ太」と言うあだ名の「伊東先生」はとても面白い先生で、ピアノがお上手で、いつも僕たちの知っている曲を即興で伴奏してくれたり、とにかく授業を面白くしてくれました。私はこの伊東先生に何度かギターを聴いてもらいました 。学校にギターをもって行って、「禁じられた遊び」や「ラグリマ」「アリアと変奏(フレスコバルディ)」「メヌエット(ラモー)」「マラゲーニャ(ブランコ)」なんかを聞いてもらったのだと思います。卒業式の時にタレガの「グラン・ホタ」を弾きました。「アストリアス」を弾きたいと思って練習したのですが、弾けなかったことを覚えています。この曲は今でも難しいと感じます。