曲目解説(Quatro Ritornelli)
9月7日(水)
四つのリトルネッロ Quatro Ritornelli
by 藤井眞吾 Shingo Fujii
音楽用語として一般的に言われる「リトルネッロ形式」は特にバロック時代のアリアや協奏曲で見られるものですが、今回私はそのことよりも「リトルネッロ」というイタリア語本来の、「帰る」という意味により強い共感を得て作品を書きました。それは私達がいつも「帰巣(きそう)」する本能を持ち、そしてそこにこそ私達が信ずる《幸福》が存在すると言う、強い願いでもあります。題名の通り、四つの楽章から構成され、個々には完結した楽章ですが、四季の移り目に間断がないように「アタッカ attacca」で、そして時には楽章の間に緊張した静寂を聞きながら、連続したひとつの楽曲として演奏することを望んでいます。
それぞれの楽章は冒頭に短い「斉唱」部を持ちます。第1楽章は「 ... verso il mare 海へ」と題した《舟歌 Barcarole》、第2楽章はイタリアの特徴的舞曲である「Tarantèlla タランテラ」、音楽と言うよりも我々人間の営みや響宴の象徴です。第3楽章は「Cantilèna 詠唱の歌」、哀歌ではなく静かに幸せを願う歌、各パートのソリストの独奏は総奏を優しく招き入れます。最終楽章の「... la fine e l’ inizio 終わりは始まり」という抽象的なタイトルは「帰る」という意味の「リトルネッロ」を別の言葉で表現したものです。古いイタリアの舞曲《サルタレッロ Saltarello》、喜びに満ちた終幕は必ず新たな幕開けにつながると思うからです。
(初演は10月8日、情報はこちらです)
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