2.モチーフ

　上の譜例中の「A」「B」「C」には共通したリズムが見られ「D」の「動機（motif）」であることがわかります。このような手法、すなわちリズムの要素を最初から全てを提示するのではなく、もっとも小さな単位から提示し、和声的展開に伴ってそれが発展し、主題のモチーフへと言わば「成長」していくという手法は、ソルの代表作「魔笛の主題による変奏曲 Op.9」の序奏でも見ることができます。
　曲は劇的な減七の和音の分散からはじまります。それは不完全小節からはじまり、和音の最上音「ド」 はつぎの小節の1拍目と連打され「ド・ド」と旋律の「動機（motif）」を提示するはずです。これは極めて重要な瞬間のはずです。ところが、これら二つの音「ド・ド」をタイ（tie）で結んだ楽譜が見かけられますが、これは如何なる理由からでしょうか？