1.責任ある編集
「悲歌的幻想曲 Fantaisie Elegiaque, Op59」はソルの晩年の傑作、ベスレイ夫人(愛称「シャルロッテ」)の死に際して作曲したこの曲は、ギター音楽の最高傑作と言ってもいいでしょう。何ら大袈裟な演奏技巧の羅列もなく、むしろ演奏技術としては容易なほうですが、しかし音楽の集中度は群を抜いて高く、優れた演奏をするには一流の音楽性を持っていなければならない作品です。
この作品はフランス(メッソニエ版)と、そしてソルの死後にドイツ(シムロック版)で出版されていますが、その原点はメッソニエ版にあると考えるべきでしょう。
勿論初版にもミスはあります。現代の出版社が綺麗で見易い楽譜に直し、初版にあるミスを修正し、私達のために出版し、容易に入手できるようにしてくれることは、きわめて重要なことです。しかし、そこでさらに新たなミスを加えて欲しくはありませんし、また音の修整をする場合、その理由を明記していただくのが、編集者の責務であろうと思います。
二つの点について言及します。まず「2.モチーフ」をご覧下さい。
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