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テンポ Tempo

2.「合間を縫う」ということ

 人間には様々な能力があります。それらの能力はしばしば人間の動物的な「欲望」と深く結びついているのではないかと、しばしば思います。羊羹の当分を判断する私の視覚能力は「食欲」と「生命存続」の使命感から生まれたものですが、今になって思えば「兄や弟より大きな獲物を獲得した」という「優越感」を満たすためにも不可欠のものであったと思います。

 この例は実在する、視覚的に捉えられるものを、量的に判断する能力です。同様の能力が「時間」に関してもあるのです。例えば45分の授業で先生が喋り始める、フと居眠りをするが、目覚めたときにはそれが果たして授業の残り何分の時点であるかということは大体見当がつく・・・。新幹線に乗って「・・・さあ京都まで一眠り」と思ったとき、頭の中では「2時間30分」という時間の量を設定し、眠っていながらも「2時間30分の砂時計」は正確に私を起こしてくれるのです。勿論この時計は、酔っぱらっているときなどは全く機能しないのですが。これらの能力はおそらく体内にある「時計」と「経験」から来るものだと思うのですが、時として驚くほど正確に働いてくれます。

 例えば「鹿威し(ししおどし)」のように、原始的なシステムで出来ているものでも、その「カ~ン」と言う音は驚くほど一定で聞こえてきます。良く耳を澄ませていれば「カ~ン、・・・・カ~ン」という「2つの音」を聞いて、あなたも一緒に三回目を「カ~ン」と声に出して言うことができるでしょうか? これはテンポをつかむ基本的作業と全く同じです。二重奏などをやっていて、パートナーが先に弾き始めたいくつかの音を聞いて「テンポはどれくらい?」ということを把握できなければいけません。これは最も基本的なことです。

 そしてさらに大事なことは、その「カ~ン、・・・・カ~ン」の「中間点(=1/2)」、あるいは「三等分点(=1/3)」、そして「四等分点(=1/4)」が推測できるようにならなければいけません。つまり「カ~ン、・・・・カ~ン」の合間を縫うことが正確にできなければいけません。これは訓練すれば、簡単なことです。楽譜で説明しましょう・・・。