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第11回 九州ギターサマーコース 2003年
11th Kyushu Guitar Summer Course, 2003
at 熊本県阿蘇山根子岳山想
主催/フォレストヒル・ミュージックアカデミー


写真提供/FOREST HILL


今年でもう11回目を迎えるというこの「九州ギターサマーコース」は、数年前からゲスト講師としてお招きいただいておりますから、もう既に半分以上の回を参加させていただいたことになります。企画・主催は現在は、博多にある「フォレストヒル・ミュージックアカデミー」が統括して行っています。当初から私は個人レッスンとさらにアンサンブル講座を持つようにとの依頼でしたので、参加者全員の方達と共に三日間の勉強を堪能することが出来ます。今年、2003年は例年よりやや遅い開講(9/26~9/28)となりましたので、サマーコースと言うよりは「初秋のギター講習会」といった風情でしたが、阿蘇山の爽やかな空気は私達の熱い勉強に程よい風を送り込んで暮れたように思います。今年の講習会の模様を少しだけレポートいたします。
1●講師陣によるアンサンブルコンサート

 写真は初日の夜に行なわれた「講師陣によるアンサンブルコンサート」のオープニングの模様です。このコンサートは第9回から行なわれています。私が担当している「アンサンブル講座」が「基礎編」だとするなら、この講師によるコンサートは「応用編」といえるでしょう。学んだ基礎的なテクニックや知識が実際にどのように応用されるのか、と言うことが実際に示される、と言っても良いでしょう。九州でのこの講習会には当地の腕利きの先生方(中野義久氏、松下隆二氏、竹内竜次氏、池田慎司氏)がいらっしゃるわけですから、その機会を活かさない手はない、と言うのも正直なところです。初めての年(2001年)には私のオリジナル五重奏曲をはじめ、ファリャの「間奏曲とスペイン舞曲第1番」等を演奏しました。この編曲は昨年の静岡でのO.ギリア氏のマスタークラスのガラ・コンサートでも福田進一氏をはじめとした錚々たるメンバーで演奏頂いたようですし、また東京の若いギタリストの方々によっても演奏していただいたので、あるいはお聞きになられた方も多いかと思います。その他に2重奏や3重奏の曲もプログラムに入れています。なぜなら2重奏の曲は作品も沢山ありますし、学習者がアンサンブルを自ら体験し、お手本とするには一番分かりやすいからです。
 今年はゲスト講師として大萩康司君も来てくれたので、6重奏をやりました。曲は昨年私がフルートオーケストラのために作曲した「友人からの音楽」から五つの楽章です。コンサートでは「アンサンブル講座」で受講生達が勉強する課題曲を講師陣の演奏によって聞いてもらうという目的もあります。写真はその演奏前に私が指揮法の基本と、課題曲について説明しているところです。 プログラムは以下の通りです。

1. 「ギターアンサンブルのための練習曲~主題と変奏」/藤井眞吾(2003)■講師全員による演奏
2.三重奏曲(全四楽章)/A.ディアベリ■藤井+大萩+竹内
3.トリオソナタ BWV527/J.S.バッハ(藤井編)■藤井+池田+中野
4.ロシアの思いで/F.ソル■藤井-松下
5.「友人からの音楽」より/藤井眞吾(2002/2003)■講師全員による演奏

 それからこれらコンサートとアンサンブル講座の会場となっているのは私達が宿泊する「根子岳山想」に付属するチャペルです。程よい広さと落ち着いた空間は私達に最高のスペースを与えてくれます。響きもとても良いところです。

 

2●レッスンとアンサンブル講座

 初日は個人レッスンと夜のコンサート(「講師陣によるアンサンブルコンサート」)で全てが終了しますが、二日目からは写真にありますように受講生全員による「アンサンブル講座」が始まります。この講座でははじめのうちは既に出版された曲を使っていましたが、今は毎年私がオリジナルの合奏曲を作曲し勉強しています。合奏曲には必ず「初心者のためのパート」を設けます。だからと言って音楽そのものが簡単すぎたり幼稚なものであっては、参加者の学習意欲が無くなりますから、その辺の作曲上の工夫は大変難しいのですが、毎年楽しい作業になっています。今年は4パートの「ギターアンサンブルのための練習曲~主題と変奏」という7分くらいの曲を作曲し、皆で練習しました。例年は講習会の一ヶ月くらい前に曲を仕上げて参加者にはあらかじめ、ある程度練習してきてもらうのですが、今年は作曲が遅れ、講習会が始まってから楽譜を配布、と言うことになりました。ですから曲の方も限られた時間で弾けるような曲としましたが、こういう場合には技術的にはそのように演奏できる曲の方が、より勉強がしやすいかもしれないとも思いました。それでも毎年、必ず、初心者パートの人達からは「わ~! 難しい!」と悲鳴が上がります。でも毎年最後には皆ちゃんと弾けるようになり、立派な演奏を聴かせてくれますから、作曲者・指揮者としては嬉しいかぎりです。
 実は参加者が最後にはちゃんと弾けるようになるというのにはいくつかの理由があります。勿論スタートは作品をちゃんと弾けるように作曲する、ことは当然ですし、スコアと完全なパート譜を用意することも当然です(ここにはコンピューターの御利益が大きく貢献しています)。しかし何と言っても大きなポイントは毎年初心者パートのパートリーダーを務めてくれるK子さんの「さあ、練習しようっ!」という明るい声が参加者を練習に誘い、いつの間にかチャペルが深夜の練習場と化している・・・、そういう前向きな状況があるのです。更には各パートを面倒見てくれる講師の方々一人一人が遅くまで特別練習につきあってくれる、という恵まれた環境も見逃せません。
 この講習会で「アンサンブル(合奏)」を必須のこととしているのには、主催者及び私の明確な考えがあります。それは、ギターを勉強している多くの人達が音楽本来の「自分以外の人と喜びを分かち合う」という経験に欠けているというという問題を克服するためです。ギターは独奏を主体とするレパートリーを持っていますが、よりすぐれた独奏をするためにはアンサンブルの基礎的なことを十二分にマスターしている必要があります。ギターには独奏のほかに二重奏でも良い作品が沢山ありますが、なかなか勉強の機会がありません。また、合奏の経験は多少あっても、例えば指揮法のことや、指揮棒の意味することを全く知らないという人が非常に多いのです。せめてこう言った講習会の時にアンサンブルを勉強しましょう、というのが狙いです。 講習会には毎年、老若男女、様々な人が参加されますが、レベルの如何に関わらず、参加者と勉強するこの「アンサンブル講座」はいつも感動的な体験です。
 二日目にはこのほかに大萩康司氏による公開レッスン、そして夜には講師一人一人によるソロのコンサートが行われました。夜は盛大にバーベキューパーティーです。

3●レッスンと発表会

 私が担当している「アンサンブル講座」のことばかりを書きましたが、これはあくまでも講習会全体の中の一部であって、勿論基本となる講義は参加者一人一人が受講する「個人レッスン」であることは言うまでもありません。少し個人レッスンのことに触れましょう。この講習会では全ての講師による個人レッスンが並行して開講されます。つまり常に同時に五つ(今年は六つ)の個人レッスンクラスが開講されているわけです。全てのレッスンは公開されていますので、参加者は自分のレッスン以外でも、興味のあるクラスを自由に聴講参加することが出来ます。そのためにそれぞれのクラスの開講時間と、受講者・受講曲があらかじめ発表されています。
  このように「聴講して学ぶ」事は演奏の勉強には不可欠のことです。こういう機会をを若い人達にはもっともっと利用して欲しいと思います。本当は私も是非他の先生方のレッスンを聴講したいのですが、残念ながら私のレッスンは全てのコマが一杯で、なかなかその時間が得られません。
 最終日には「アンサンブル講座」の最後のレッスンがあり、レッスンの最後には、気持ちを引き締めて、本番と同じ気持ちで演奏をします。とても感動的な瞬間です。昼食後には参加者による発表会(コンサート)があります。 一人一人がまさに「入魂」の演奏を聴かせてくれます。この講習会で学び、プロの道へ進んだ人達、あるいはかつてこの講習会の受講者であった人が今は講師として活躍していたり、・・・歴史の深さを痛感せずにはいられません。

 会場のことを少しお話しましょう。昨年までは「根子岳山想」が私達の宿舎であり、レッスン会場であったのですが、今年は参加者の増加にともない、すぐ隣にあるもうひとつのペンション「森のレンガ館 」にも宿舎としてお世話になりました。こういった講習会では「貸し切り状態」で勉強できることが必須条件ですが、特に「根子岳山想」さんには毎年大変お世話になっています。私達のわがままも快く受け入れて下さり、いつも最高に美味しい料理を、最大のボリュームで提供して下さいます。またチャペルでの私達の演奏を必ずオーナー女史が聞いて下さる光景も、参加者には言葉には表せないほど嬉しいことです。また今年初めてお世話になった「森のレンガ館 」も温かく、そして優しく私達をサポートして下さり、心より感謝いたしております。これらふたつのペンション情報は以下のサイトからご覧頂くことが出来ます。

根子岳山想

森のレンガ館

 真摯に勉強すること、真剣な時間を通して初めて音楽という芸術が語り継がれてゆくと信じています。来年はどんな顔と会うことができるのでしょうか、そしてどんな感動が待っているのでしょうか。今から楽しみです。

(2003年/藤井眞吾)