No.13 Allegretto
3/8拍子、ホ短調、躍動的で力強い曲です。この曲で、本曲集の前半が終わり。つまりこの曲が順番としては、ほぼ真ん中に位置するのですが、この印象的な作品はなんだかその目印、一里塚( milestone )のように思えてしまいます。
曲は「A」「B」「C」の三つの部分から成り、いずれも「8小節」の長さを持つので、均整のとれた肉体のように,バランスよく、奏者にとっては理解し易い構成です。
「A」の最初、1弦の開放弦に向かう装飾音は雑音を伴い易いので気をつけましょう。また各小節、1拍目の和音は上下の音のバランスよく、同時に発音するようにしましょう。タイミングがずれると、音が積み重なった、力強い効果が薄れてしまいます。最後の2小節はひときわ力強く、アクセントを伴って。最後の三つの「シ」の音は、最初だけ第3弦で(旋律)、後の二つは第2弦で軽やかに。
「B」では第2弦で弾く「シ(属音)」はいつもはっきりと、しかし重々しく。開放弦なので、弾弦の方向を間違うと音が潰れてしまいます。アポヤンドで弾けば、安定した音量と相応しい音質が得られるかもしれません。4小節目の「ミ→レ#」はアポジャトゥーラですから、はっきりしたアクセントをつけて。
「C」は一転して、明るい「(ホ)長調」、同主調に転調します。私はここの転調の効果をより一層感じられるように、ほんの少しだけテンポをゆったりとさせ、旋律や和音が膨らむ時間を作った方がいいと思います。乗降していく旋律も、緊張感だけでなく、広がるふくよかさを感じたいと思います。7小節目から7小節目にかけての終止は、二つの導音(leading note)を、「レ#→ミ:2弦で」「ラ→ソ#:4弦で」 と私は弾いています。押さえは少し難しくなるかもしれませんが、こちらの方がつながりが奇麗に演奏できるからです。
曲は「ダル・セーニョ」で曲頭に戻り「B」で終わりますが、「フィーネ(FIN)」の記号が妙な位置についています。習慣に則り、ダ・カーポでは繰り返しをしない、とすれば「1˚」の一拍めで終わるべきでしょうに、仮に繰り返しをしたとしても「2˚」の一拍目で終わるべきでしょう。
ホ短調と言う調性は、ギターにとって色々と都合がよく、音楽的表現の幅も広いキーです。勿論そのことは作曲者ソルにとっても同じであった筈ですし、ソル自身もこのキーでいくつもの名曲を書いています。この第13番は、短いながらも、そういった「ソルの書いたホ短調の名曲」のひとつに数え得るものだと思います。 |