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ソルの Andantino
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ソルの Andantino
更新/2010年10月20日
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ソルの Andantino

Andantino

 時々「ギター名曲集」の類に、我慢しきれない憤りを感じることがあります。原曲に対する、無責任さと、何とも言えない醜さです。こういう曲集は生徒達が「安くて沢山曲が入っているから」と言う理由で、レッスンにもよく持ってくるのですが、驚くような事がしばしばあり、黙ってはいられない・・・といつも思っていました。
 今度の演奏会で、F.ソルの「六つの嬉遊曲 作品2」を演奏するのですが、その第3曲「Andantino」は有名な作品です。しかし、一般に流布している楽譜にはソルが存命中にロンドンやパリ、そして後にドイツで出版された楽譜にも見られない勝手な音の変更が多々見られ、辟易します。

 まず「A」の部分。曲の冒頭ですが、なぜこの「レ」を割愛するのでしょう? 理由がわかりません。

 次は深刻です。「B」は「二長調」に転じた前半から後半に移る部分ですが「1.」と「2.」を同じ音にしている・・・、つまり「ソ」を全部「#」にしていますが、もしかしてこれを初版のプリントミスとでも誤解したのでしょうか? 繰り返した二回目は「ソ」が「#」に停滞し、次で「ナチュラル」になるという美しい瞬間なのですが、それを台なしにしています。初版でのミスは「ミ」が「ナチュラル」なのではなく、「ソ」が「ナチュラル」になるという点です。これは許しがたい変更です。

 最後は「C」ですが、ここではトニックペダル上の属七の和音の「七度」から主和音「三度」への解決を無視しているのです(「ファ#」が無い!)。これでは気持ちが悪い、やはり許せない変更です。

 名曲集の類が一概に悪いとは言いませんが、やはりこう言った無責任で勝手な変更はやめていただきたい。また現代の楽譜ではしばしば、こういった19世紀の名作を断りもなしに「改編」し、それに言及することもなく、堂々と出版しているものも有り、それはさながら芸術作品を強姦しているようなものだとさえ、私には思えます。プロの音楽家を目指す若者たちには、こう言った問題に対し鋭敏になって欲しいと思いますし、またこう言った「安かろう、悪かろう」という楽譜で音楽を勉強する怠惰さを厳しく批判したいと思います。出版社の責任も甚大です。

(藤井眞吾/2010年10月20日 )