今回は《踊らない舞曲集》という、ちょっと諧謔的なタイトルにしてみましたが、あまり深い意味はありません。文字通り、「現在私達がギターで演奏している《舞曲》のほとんどは、実際に誰かが踊るために作られた音楽ではない・・・」と言うくらいの意味なのですが、それでも本日のプログラムの中で言えば、シューベルトの音楽は決してそうでは無く、社交界などの場で実際に踊ることを目的として書かれた数ある舞曲集にふくまれるものですし、バルトークの民俗舞曲集は、少なくとも「舞曲」としての本質を少しも失っていないものであろうと思われます。
このタイトルを思いつかせたひとつのエピソードがあるのですが、それはコンサートの中でご紹介することとして、器楽作品のなかの「舞曲」が、その本来の用途から解放されて、純粋に演奏する為の音楽、あるいは鑑賞する為の音楽となったとき、特徴的なリズムは残して、テンポは少なからず自由を得ることになりました。それは器楽の演奏者に、楽器の個性を発揮したり、時には演奏技術の豪華さを披露するチャンスを与えたのだろうと思います。
今回は昔から大好きだったバルトークの作品を編曲してみました。この曲は私が若い頃すでに、ギターの二重奏やアンサンブル、フルートとギター、あるいは古楽器のアンサンブルなどに編曲し演奏したことのある曲ですが、ギターの独奏に編曲したのは初めてです。かなりの挑戦であった事は言うまでもありませんが、あらためてギターの独奏の面白さを痛感いたしました。お楽しみ頂ければと願っております。
(藤井眞吾:記/2015年1月23日)
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