益田正洋 ギターリサイタル〜SONATA

program ●F.ソル:ソナタ ハ長調Op.15-2/ J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンの為のソナタ 第1番 BWV1001/L.バークレー:ソナチネ Op.51 /J.トゥリーナ:ソナタ/F.M=トロバ:幻想的ソナタ

2010年5月13日(木)7時開演 チケット/前売¥3500、当日4000(期間限定ペアチケット¥5000) ご予約 主催/ マンサーナ Manzana Tel.075-972-2834 会場/京都府民ホールアルティ(地下鉄烏丸線「今出川」下車南へ徒歩5分) 京都学生ギター連名協力公演


益田正洋さんが京都で四年ぶりのリサイタルです。最新アルバム《SONATA》から重厚なプログラムを聞かせてくれます。ソルやバッハのような、クラシックギターではスタンダードといえる作品、そして名作ながら余り演奏される機会のなかったイギリスの作曲家バークレーのソナチネ、またセゴビアのために書かれながら何故か演奏されることのなかった、そして最近その存在が明るみになったばかりのスペインの作曲家トローバのソナタ「幻想的なソナタ」など、この演奏会でなければ聞くことができないというプログラムです。主催のマンサーナのサイトには益田さんのインタビューなども公開されています。

(藤井眞吾 2010, 5月)


曲目解説
〜 SONATA という試金石

藤井眞吾(ギタリスト/作曲家)

 ヨーロッパの音楽およびその作曲術はキリスト教という宗教との関わり、そして世俗での発展、という両輪によって目覚ましい変化を達成しました。ルネッサンスとバロックの200〜300年間は特にそれが顕著でしたし、19世紀のクラシックと呼ばれる時代には、音楽を創造する技術そのものが精緻を極め、完成されます。音楽の書法が微細を極め、表現の精度が求められると、そこには演奏者にとって当然のごとく、より高度な演奏技術が求められます。なかでも器楽音楽の分野で発展した「ソナタ形式」は演奏家にとってひとつの挑戦であっただけでなく、それは作曲者の作曲技術が観られる試金石でもあったのです。それは「作者と奏者」そして「音楽と聴衆」の関わりが、ソナタ形式という弁証法的なプロセスを経て、深く語り合う事が出来るという証でもあります。本日の「益田正洋 ギターリサイタル」は「ソナタ SONATA」と銘打った、演奏者としての大きな挑戦ではなかろうかと私は思っています。

 カタロニア出身のギタリスト・作曲家、フェルナンド・ソル(Fernannd Sor, 1778 - 1839)は「グランド・ソナタ」と題した二つのソナタ(作品22、作品25)と単一楽章のソナタ二つ(「グラン・ソロ」作品14、作品15-2)を残しています。本日演奏される「ソナタ ハ長調 Op.15-2」は力強く明快な第1主題と、柔らかな第2主題が、ギター的な分散和音や軽快な付点のリズムを伴って発展します。

 ヴァイオリンの演奏技術も相当なものであったと言われるJ.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685 - 1750)の場合の「ソナタ」という言葉は「ソナタ形式」とは何らの関連を持っていません。それは同時代のD.スカルラッティの場合と同様に「器楽曲」という通称のようなものですが「緩-急-緩-急」の四つの楽章は各々、ヴァイオリンの極限とも言える演奏技術を要求しています。第1楽章「Adagio」、第2楽章「Fuga - Allegro」、第3楽章「Siciliana」、第4楽章「Presto」。「無伴奏」というタイトルは「通奏低音を伴わない」という意味で、単一の旋律線の中に和声進行を示す低音を含んでいたり、旋律の動きそのものが隠された低音を暗示するように、巧みに作曲されています。これはギターにとっても難曲中の難曲。

 20世紀イギリスとを代表する作曲家の一人、レノックス・バークレー(Lennox Randal Francis Berkley, 1903 - 1989)は「卿 Sir」の称号を持つので、しばしば「バークレー卿、Sir Lennox Berkley」と呼ばれ、ギターのために協奏曲を含むいくつかの作品を残しています。1957年にやはり同じくイギリスのギターの名手、J.ブリームのために作曲されたこのソナチネは三つの楽章「Allegretto - Lento - Allegro non troppo (Rondo)」を持ちますが、耳障りの良い軽快な音楽とは裏腹に、実際には演奏は容易ではなく、これまで演奏会プログラムに取り上げられることはあまりありませんでした。益田正洋さんのようなヴィルトゥオーソをしてやっとそれが可能となります。

 演奏会後半は20世紀のスペインを代表する二人の作曲家の作品です。ホアキン・トゥリーナ(Joaquin Turina, 1882 - 1949)はセヴィリアの生まれで、音楽を生地とそしてマドリッドで学びますが、後にパリのスコラカントルムでヴァンサン・ダンディ(Vincent d'Indy)の薫陶を受けます。そのため、スペインの民族音楽を題材とした作品でも、透明感のある音の響きが特徴的です。ギターのためにいくつかの曲を残しましたが「ソナタ」はそのなかでももっとも規模の大きなものです。楽章は三つあり「Lento」と「Allegretto」が始終交錯する第1楽章、旋律が官能的な第2楽章「Andante」、躍動的なロンドの第3楽章「Allegro vivo」。巨匠、アンドレス・セゴビアのために書かれた作品です。

 今夜の演奏会の最高の目玉はこのトローバの「幻想的ソナタ」であるといえるかもしれません。アンドレス・セゴビア(Andres Segovia, 1893 - 1987)が20世紀のギター音楽に於いてあまりにも大きな存在であることは、彼のために作曲された作品の質と量が桁外れであることからもわかります。それに拍車をかけたのが近年になってセゴビアの遺族が管理する遺品の中から発見された夥しい数の未公開作品(未出版作品)で、それらの一部がセゴビア・アーカイブとしてイタリアのベルベン社から続々と出版され、公となりました。首都マドリッド生まれで、日本で言うなら「生粋の江戸っ子(マドリッドっ子?)」であるフェデリコ・モレノ・トローバ(Federico Moreno Torroba, 1891 - 1982)はサルスエラ(〜スペインの小オペラ)の作曲家としても知られますが、ギターのためにも沢山の曲を作曲しています。しかしなぜかこの「幻想的ソナタ SONATA - FANTASIA」は出版もされず、知られていませんでした。セゴビアはなぜかこの曲を弾いたという記録がありません。憶測以上の何物でもありませんが、1950年代初期に作曲されたと思われるこの大作をステージにあげるための準備時間がすでにセゴビアにはなかったのかもしれない、と私は思います。幻想的な序奏で始まる第1楽章は「Allegretto」でソナタ形式。第2楽章は小粋なメヌエットのような「Allegretto」。第3楽章はスペイン的な快活さにあふれた「Allegro」。私は名作の実演に今まさに触れる喜びでいっぱいです。

Google
WWW を検索 http://homepage3.nifty.com/shingogt/ を検索

WARNING!/本サイトに掲載されている画像、文章等、 全ての内容の 無断での転載・引用を禁止します
サイトマップ | リンクポリシー | お問合せ
Copyright © 2007 Shingo Fujii, All rights reserved