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レオナルド・ブラーボ ギターリサイタル
Leonardo Bravo, Guitar Recital
2004年3月18日(木)/博多・あいれふホール/
主催/フォレストヒル音楽工房


写真提供/FOREST HILL

 レオナルド・ブラーボ Leonardo Bravo と言う名前のギタリスト・・・、アルゼンチン出身のギタリストをご存知の方は少ないだろうと思うのです、3月18日までは・・・。私が彼からの連絡をもらったのは昨年のこと。彼が活動の拠点を日本へ移すには大きな決断が必要だったはずですが、この日の彼の演奏を聴いて、彼の決意の確かさとそしてこれから身近に享受することの出きる「大きな才能に」大きな喜びを感じたのは私だけではなく、会場に足を運んだ殆どの人がそうであったに間違いありません。
 リサイタルは3月18日、博多・あいれふホールで開催(主催/フォレストヒル音楽工房)されました。抜群の音響、とりわけギターにとっては最高の一つのホールと言えるこの会場に颯爽と現れたブラーボ氏は祖国・アルゼンチンの音楽家、E.ファルーとA.ユパンキの音楽から開始しました。とっても澄んでいて軽やかな音、切れ味のよいリズム、そして私達ギタリストをして驚愕させたのは、驚くほど安定したテクニックでした。そのことは続く「ロンド イ短調(D.アグアド)」「ファンダンゴ(J.ロドリーゴ)」「Koyunbaba(C.ドメニコーニ)」 で一層明らかな事となりました。アグアドの難曲が何と軽やかに、そしてロドリーゴの超技巧曲が完璧に演奏されて、会場にはブラボーの嵐。・・・と言うのはいささか大げさな表現かもしれませんが、「大人しい日本の聴衆」には珍しく、そんな声があちこちで聴かれ、会の盛り上がりが全体に及んでいる証と思われました。第二部は自作品三曲、やはりアルゼンチンの音楽で、タンゴが三曲、さらにピアソラの「秋」「夏」、最後の「シエロ・アビエルト」に至っては、彼がすっかり私達聴衆をあたかも魔法にかけたかのように魅了し、興奮させ、誰もがもっともっと彼の演奏を聴きたいと思って、激しい嵐のような拍手を送っていたのでした。
 彼のことをもう少し詳しく書きましょう。リサイタルの二日前、奥様と一緒に、そして今回のリサイタルの主催者であるフォレストヒルの森岡氏夫妻等と一時の食事会を楽しむことが出来ました。アルゼンチンが二年前から大変な状況になっていて、音楽家にとってもその影響は絶大であること、加えてブラーボ氏が以前から音楽家としての活動の場を海外に求めていたことなどから、彼の奥様の祖国・日本(博多)が第二の祖国となったわけです。アルゼンチン国内では幾つものコンクール優勝暦を持ち、また国立ロサリオ大学で教鞭をとっていたという経歴は立派なものですが、昨今の同年代のギタリストが幾つもの国際コンクールでの経歴を引っさげて登場することを思えば、彼の経歴は決して華やかなものではありません。事実彼の風貌と人柄は、一番上に見られるニヒルなプレゼン用の写真とは正反対で、人懐っこい笑顔と優しい語り口、一見すると音楽とはあまり関係のなさそうな気取らない性格で、日本の何処にでもいる「優しいお兄ちゃん」と言った感じです。しかし彼の演奏からみなぎる音楽の限りない生命感や、温かい音楽、そして尽きることのない創造性、気品あふれる歌心、超一流の演奏技術は彼が最上級の音楽家であることを証明してあまりあるものです。ステージの上で彼がやっていることのどれ一をとっても「派手な所作」や「大げさな表現」などは全く無いのに、こんなにも聴く者をして華やかな気分にしてくれるのですから、脱帽のひとことです。作曲を始めたのは最近のことだと言っていましたが、演奏会で聞かせてくれたものは、既に熟練の技巧を思わせるような完成されたスタイルを感じさせました。中でも奥様に捧げた「フクオケーナ Fukuokena」の繊細なハーモニーや「チャカレラ」の何とも言えないリズムの妙技は絶品です。
 今回博多へは今月末にこちら関西で行う中野義久氏との二重奏の演奏会の練習のために行ったのですが、このような素晴らしい演奏会を聴くことが出来て本当に幸運でした。既に「フォレストヒル・ミュージック・アカデミー」のギタークラスで教鞭をとることが決まり、これから九州の若いギタリスト達に多大なる貢献をもたらしてくれるでしょうし、また博多を拠点に、日本中、そして世界で活躍することを心より願っています。(藤井眞吾 記/May.22.03)

Leonardo Bravo さんのWebSite