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Guitar Study

《神秘の防壁 Les Barricades Mystérieusesby Shingo Fujii

神秘の防壁
Les Barricades Mystérieuses
更新/ 2018年3月25日
 
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神秘の防壁 Les Barricades Mystérieuses

 

 「神秘の防壁 Les Barricades Mystérieuses」という不思議なタイトルの曲があります。フランスのバロック時代のクラブサンの大家、フランソワ・クープラン(François Couperin /1668 - 1733)の作品で、クラブサン曲集第2巻第6曲です。ギターでも編曲されしばしば演奏されるようですが、私は来週の演奏会(藤井眞吾コンサートシリーズ 第132回 《神秘の防壁 Les baricades mysterieuses 》3月31日・土 )で初めて演奏いたします。
 実は大好きな曲なのですが、ギターのオリジナルではない事と、私には技術的に難しいと思われるところが沢山あるように思えて、これまで挑戦してきませんでした。初めて聞いたのは小学生か中学生の時に、NHKのFM放送から、アメリカのギタリスト、クリストファー・パークニングの演奏でした。それそれは、美しく、またタイトルの通り神秘的で、深く強く引きつけられ、以来何十年も私の耳と心の中にその響きが残っていました。
 数年前に、生徒がこの曲をレッスンに持ってきて、教えようとしたのですが、どうにもその編曲がよく分からない・・・。私が記憶していた音楽が蘇ってこない、と言った方がいいでしょう。それからこの曲を色々勉強してみたのですが、生徒の持ってきた編曲譜は下のような表記に、つまり簡潔にして書かれていたわけです。

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 ところがクープランの書いた楽譜は全く違っていて、四つの声部の音価を執拗に書き表したもので、ギターの編曲ではそれを単純なアルペジオのように簡略化したものだったわけです。これでは作品本来のもつ味わい、作者が意図する音楽的な要点が見逃されてしまいます。

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 もっとも、二段譜で書かれた鍵盤楽器の音楽をギターの一段譜に無理矢理収めてしまうと、ゴチャゴチャしてかえって見にくくなると言うことはありますから、演奏者が音楽的な方向を理解していさえすれば、簡略化したアルペジオ表記もあながち悪いとは言えません。またギタリストや、ギターだけを勉強してきた人は二段に書かれた総譜に慣れていないと言うことがありますから、そういう点でもそれは避けられない解決策なのかもしれませんが、私はあえてそれを二段譜で表わしてみました。

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 私のコンサートシリーズでは毎回、プログラムに含まれる私の編曲作品を、希望された方にはプレゼントすると言う、「プレゼント編曲」の企画を行っていますが、今月はそのような楽譜をお渡しすることになると思います。

 そもそも「神秘の防壁 Les Barricades Mystérieuses」というこの不思議な曲名の意味を、上声と内声で、絶える事なく繋留し、解決したかと思うと和音が(低音が)次へと進んでいると言う、その非和声音をいつも隔てている「小節線」を「防壁 baricade」になぞらえているのだと言う説を唱える人もあり、私もその意見にかなり同調しているわけです。ならば、やはり楽譜には、それがギターのためのものであって、解決をいつもじらせる声部と、それを隔てることによって不思議で神秘的な効果を産み出している小節線(baricade)の関係がはっきりと見て取れる楽譜表記の方が良いだろうと思うに至ったわけです。ギター用に簡略化することによって、かえって音楽の糸が迷宮入りしてしまうと言う、これは良い例ではないでしょうか?