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《24の漸進的小品集 Op.44

by F. Sor

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24の漸進的小品集 Op.44

2023年3月1日
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No.17 Cantabile

 「Cantabile(歌うように)」という指示はこの曲集では、唯一この曲だけで、珍しいのですが、私はソルの多くの曲は(云うまでもなくギター曲でも)、とても声楽的だと思うのです。それは勿論ソルの音楽が大変に表情豊かで、旋律が美しいという事なのですが、ソルが幼少時にモンセラートの修道院で神学を学ぶと同時に、そしてバシリオ神父の指導のもとギターを学ぶと同時に、音楽の基礎教育として「聖歌(合唱)」を学んだいたという事が深く関係していると思うのです。例えばこの曲集、作品44の中の多くの曲は、二声の曲であれば二人で、三声であれば三人で実際に歌ってみる事ができるものが多々あり、またこの曲集を学ぶ人は出来る事なら実際にそのような勉強の仕方をされてみたらいいと思うのです。そうすることによって、各声部の旋律の美しさや重要さが解り、また和音の意味がよりはっきりと感じられるからです。


 前置きな長くなりましたが、実際に曲をみていきましょう。

44-17

 14番から19番までの6曲は「レ(D)」を主音とした調の曲ですが、この曲だけが「b(フラット)」がひとつの「ニ短調 D-minor」で、そのほかは「#(シャープ)」が二つの「ニ長調 D-Major」です。 ニ短調はギターでは割と良く出てくる、そして美しく響く調です。多くの場合は「6弦」を「レ(D)」にさげて(=スコルダトゥーラ)」演奏するように作曲されますが、ここでは「ミ(E)」のままです。
 曲は「a」と「b」の単純な二部形式で、それぞれは8小節の繰り返しです。しかし単純な繰り返しのように聞こえては退屈ですので、音は同じ事でも繰り返しの際に、何か表情の変化を見つけましょう。
 何カ所が「スラー(slur)」が抜けていると思われるところ(あるいは作者が意図的に、学習者への課題として書き込まなかった)がありますので、それを赤インクで書き足しておきました。その中には「開放弦から始まる」スラーもあって、現実的にスラー奏法は使えませんが、二つの音の繋がり方や、ダイナミックスのバランスなどを「スラー」で演奏したのと同じようにしましょう。
 「b」のセクションの7小節目、「ファ→ミ」を1弦で演奏するように、運指は指示されていますが、これはソルの時代の楽器ではうまく行ったかもしれませんが、現代の楽器では必ずしも美しくいきません。私は「ファ=2弦/ミ=1弦」とした方がいいと思います。ただし開放弦の「ミ」が強く出ないように、気をつけて。
 ダイナミックスやアーティキュレーションに関する私の考えを楽譜に書き込んでみましたので、参考にして下さい。曲の最後の三つの音(ラ・ファ・レ)は遠くで聞こえる囁きのように、軽やかに演奏して下さい。ピアニッシモです。
 旋律の持つ音楽的な表情を学ぶ、好個の作品です。まるでオペラの中の一節、たとえば悲歌劇の中のアリアのように。劇的な音楽です、これは。