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《24の漸進的小品集 Op.44

by F. Sor

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24の漸進的小品集 Op.44

2023年3月1日
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No.15 Andante

 この曲は一見、単純で易しい曲のように見えます。特に前半は単旋律ですから、尚更そのように思えてしまいます。しかし実際に弾いてみると、思いのほか難しく、明快な良い演奏をしようとなると一層その難しさを感じるでしょう。理由のひとつは、この曲は完全に「二声」の曲であり、「二声」というのはギターにとってはいつでも決して容易な事ではない、という事実。そしてもう一つの理由は、決して長くはないながらもモチーフが頻繁に現れ、連続して発展していくので、音楽的にものんびりと息つく間がない、という事が考えられます。

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 前半は「4小節+4小節」。まず属音の「ラ」から主音「レ」までの下降音形が最初のモチーフ(あるいは最初の三つの音、とも考えられる)。続く4小節は属音「ラ(低い「ラ」)が一気にジャンプして主音の「レ」まで、そのあとは分散和音形で1オクターブ駆け上がります。そのあとは再び属音「ラ」から音階の形で下降してきますが、「ソ」が「#」となるので、前半は属調の「イ長調」に転調して終わります。
 単純に見える前半ですが、二つのモチーフ、「A(下降する音階)」と「B(5度跳躍する)」の対照的な性格を「提示」している重要な部分である事が解ります。

 後半はまた主調(ニ長調)に戻って、その属和音で開始されたと考えられますが(A1)、「レ」に「#」がついてその応答(A1-r)はホ短調の属和音が聞こえ、次の小節では転調したかのように感じますが(A2)、その応答(A2-r)は再び主調(ニ長調)に導きます。
 続く2小節ごとの和音の繰り返しは(D)まるでスペイン民謡の一節を連想させます。スペイン人であるソルの血が、ちょっと騒いだのかもしれません。
 そのあとの4小節間の和音の変化(Bm/D → C/E → B7/F# → Em/G)は劇的です。順次進行する下声部をはっきりと響かせなければいけません。
 「A3」は明らかにモチーフの「A」が発展したものです。「A3-r」は云うまでもなく、それに対する応答です。その下声部の動きは「E」へ連続しますが、今度は上声部がその応答をします(E-r)。

 「F」からの上声部は、曲の冒頭とまったく同じ旋律ですから、まるで「ダ・カーポ Da Capo」したかのように聞こえる筈です。ところが、曲の最初では上声部のみがあって、単旋律でしたがここからは下声部も独立した動きをしていますので、二つの声部を明確に聞かせなければいけません。そのためには二つの声部のアーティキュレーションをはっきりと理解している必要があります。
 最後の6小節間は執拗に二つのモチーフ「A」と「B」が現れ、まるでフーガに於ける「ストレッタ stretta」のような緊迫感を産み出しています。技術的にも、特に左手が難しい部分です。