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ESSAY

藤井眞吾のエッセイ《りんごのおと》

ESSAY
りんごのおと

 
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2.アイ・アム・ア・トレッキー!

 

 「トレッキー」という呼称があるそうだ。アメリカのTVドラマ、宇宙を舞台にしたいわゆるスペースファンタジー物の先がけと言っても良い、かの有名な「スタートレック」の熱烈ななファンをそのように呼ぶのだそうだ。ならば、私も歴とした「トレッキー」である。
 私の認識に間違いが無ければ、現在日本で放映されているものはシリーズ第4作目になる。第1作目のカーク船長とミスター・スポック以来、一貫して展開されるストーリーは地球人の伝家の宝刀「人間性/ヒューマニズム」と宇宙の渾沌との対決、乃至はその葛藤から垣間見える己の新たな悟りとでもいうべき、いたって禅問答的な世界である。何れのシリーズでも登場人物は極めて重要な役割を果たし、有機的に物語を構築しあっている。
 私がスタートレックシリーズを愛し、トレッキーを自称しているのは魅力的なキャラクターや近未来的でフェティッシュな映像だけが理由ではない。物語の際限ない味わい深さというか、脚本家がいかにしてストーリーを展開していくかという、その巧でスリリングな語り口が、私を虜にしているのである。もう少し説明を加えるなら、こういった「要素(キャラクターあるいは出来事)」の有機的な構成というのは、まさに音楽そのもの、特にヨーロッパで数百年にわたって培われてきた音楽の姿その物だからである。ひとつの音を聞いてそこに幽玄の世界を感じるのではなく、その音が一体次の音とどのように関わって来るのかという、プロセスこそが重要である、と言う点が西洋と日本の音楽、・・・もしかしたら文化の違いなのではないかと思う。

 

藤井眞吾  

「りんごのおと No.2」2001年11月15日発行