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第80回《シャコンヌ Ciaccona 8月24日・土

   

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シャコンヌ

藤井眞吾

 作品にはそれぞれ、色々な思い出があると思います。私のような年齢になると、若い頃に勉強した曲を再び演奏する時には、その曲を勉強していた昔のことを、否が応でも思い出してしまいます。そのことが「妨げ」にもなり「勇気」にもなります。不思議な事に、そういう思い出はどんな曲でもある、というわけではなく、時には全く思い出せない曲と言うのもあります。

 バッハの名曲「シャコンヌ」は沢山の思い出を私に与えてくれました。中学生の時に、ギターをやっている先輩に「ギターの曲の中で何が一番名曲で、難しいんですか?」と聞いたら、「そうだな、テデスコの《タランテラ》とバッハの《シャコンヌ》を弾けたら、あとは何でも弾けるだろうな・・・」と言う返答でした。それから早速私はこの二つの曲の楽譜を買い求め練習してみたのですが、どちらの曲も、なぜ名曲なのか、そして難曲なのか、よく分かりませんでした。それから、バッハの《シャコンヌ》の収録されたLPレコードを探して、色々と聞いてみましたが、いくつかの演奏は退屈な練習曲のようにしか聞こえなかったのは、とても残念で、やはり「どうしてこれが名曲なんだろう?」という思いは募るばかりでした。それからしばらくして、セゴビアのレコードと、はハイフェッツのレコードを手に入れて聴いてみると、それまで聴いていた音楽とはまるで違う、大きくて、熱くて、神秘的なものがあることに気付かされました。今はこの曲を通常とは全く違う方法で演奏しているので、若い頃に身につけた事を全て忘れて、新しく吸収しなければならないのですが、これが思いのほか大変難しいことです。

 演奏者が作品に対して色々な思い出を持つように、作曲者にとっても、作品ごとに様々な思い出があるのだろうと思います。バッハがこの曲を書いたことに関して、様々な推測がなされています。私にとっては、それがどのような理由で作曲されたか、ということよりも、この曲を書きながらバッハは一体何を考え、何を感じていたのかと言う事に、大変興味があります。私自身も作曲をしますが、曲を書いていると時々、自分が書いているのではなく、自分の中に居る誰かが「書け!」と言っているように、そしてその声に突き動かされて「書いてしまった」と感じることがあります。この作品は、バッハにとっても、もしかしたらそういう瞬間に生まれた作品なのでは無いかという気がしています。

 

(2013/8/24)

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会場:アートステージ567

京都市中京区夷川通烏丸
西入巴町 9-2 「コロナ堂」2F
(Tel. 075-256-3759)
*地下鉄「丸太町」6番出口より徒歩1分

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