曲目について
藤井眞吾
インターネットの時代になって、辞書やや辞典に頼らなくても様々な知識が・・・、そして新聞を読まなくてもニュースが・・・、簡単に手に入れる事ができる時代になりました。音楽の資料や作曲者に関する情報も同様です。ところが本日演奏する「フランツ・ブルックハルト Franz Burkhart」という作曲者に関しては、本当に最低限の事しか知る事ができません。1902年、ウィーンに生まれ、同地の大学で音楽学と作曲、そしてピアノとヴァイオリンを学び、少年少女合唱団の指揮をしたり、主に合唱作品を残した、・・・と言う事が情報の殆どなのです。ところが、私の手元にある「ユバーサル」から出版されたギターのための「パッサカリア Passacaglia」という彼の作品は、あたかもギターを熟知した才能溢れる作曲家であるかのように、私に語りかけて、いきおい、なぜそれ以外の作品が残されていないのか、不思議で仕方がないのです。作曲が「1940年」ということは、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻した翌年、そしてその侵略の手がオランダにまで及び、すでにヨーロッパは第二次世界大戦の戦火に突入していた時の筈です。
先月は《春》と言うタイトルでプログラミングしたのですが、なんと真冬のような寒さでした。そこで、今日はもう一度《春》の到来を喜んでみたいと思います。モーツァルトの作品は「来て、大好きな5月よ」と歌い出します。メンデルスゾーンはシューマンの才能を早くから高く評価しましたが、シューマンの「詩人の恋」はハイネの詩によるものです。
こよなく美しい五月に
ハイネ「叙情的間奏曲」より
"Lyrisches Intermezzo" Heinrich Heine
こよなく美しい五月に
すべてのつぼみが弾けて咲くように
ぼくの心の中にも
恋が花開いたんだ
こよなく美しい五月に
すべての鳥たちが歌うように
ぼくも彼女に告白したんだ
ぼくの憧れと そして願いを
(2013/5/18)
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