曲目について
だいたい、いつもはコンサートのテーマを決めたり、何かひとつ事に沿って曲を選び、並べたり、そうした方が演奏会の宣伝もし易く、また「次回はこういう演奏会をやります!」と言い易いわけですが、今回は《黒いデカメロン》というタイトルにはしていますが、特別な意味はありません。まあ、この曲が一番長い曲だというだけで・・・、またタイトルとしてもなかなかよろしい・・・、と考えたわけです。
とはいえ、この曲の作者、Leo Brouwer は20世紀のギター音楽を考えたとき、間違いなく重要な音楽家の一人で、作曲家としては勿論のこと、1980年くらいまではギタリストとしても大変興味深い活動をしていた人です。勿論、私にとっても「大きな存在」の一人ですが、ブローウェルは武満徹にこの頃つよい関心を寄せていました。当時の作風にはその影響が如実に見て取る事ができます。ブローウェルは若いときから沢山の作曲家のスタイルを吸収し、それを自らの作品としてギターのレパートリーに加えて来たわけですが、武満の場合はオリジナル作品でも、編曲作品でも、あまり他に類型を観ることのできない、独自の音楽世界を作り出しています。
ブローウェルは「演奏家であり作曲家」ですが、武満徹は全くギターを弾く事ができませんでした。前半のプログラムではメルツ、タレガはともに素晴らしいギタリストでしたが、バッハは言うまでもなく、グラナドスはピアニスト、そしてトゥリーナはグラナドス同様スペインの作曲家ながら、ギターの演奏は出来ませんでした。バッハとグラナドスは私自身が編曲しました。トゥリーナの作品は巨匠A.セゴビアの手によってギターで演奏が可能な形に仕上げられています。
・・・こうして考えてみると《黒いデカメロン》というタイトルが、何だか深い意味を持っているような気がしてきました。
(藤井眞吾/2012年9月21日)
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