《曲目解説》
「小品集」というテーマはこのコンサートシリーズでは既に何度かとりあげて来たものです。それはギターには美しい小品が沢山あるからで、プログラムとしてはまさに無限の楽しみがあると思います。
こういった作品を練習しながら、私は毎回「ギター弾きになって、本当に良かったな〜」と感じるのですが、小品でありながら、音楽的なまとまりと、美しさに溢れていて、簡潔であればある程、弾くことの楽しみが増し、奥の深さを感じるからです。かつて、スペインの巨匠、A.セゴビア氏がインタビューに答えて「私のコンサートに足を運ぶギター愛好家達の多くは、ソナタや大規模な現代音楽を聴きにくるのではなく、タレガの《ラグリマ》や《アデリータ》のような小品を心待ちに、楽しみにくるのだ。」というような事をおっしゃっていました。それは愛好家達のいつまでも変わらない「名曲小品指向」を揶揄したようにも聞こえますが、反面、ギターと言う楽器の持つ特徴を看破しているとも言えます。
私は若い頃から、現代音楽の新作初演や、大曲を沢山弾いてきました。コンクールやリサイタルではそういった作品達と格闘して来たと言っても良いでしょう。が、この年齢になって、そして「アートステージ567」でのコンサートシリーズを始めて、やっとゆっくりとこういう小品を楽しむ時間を見つける事ができたと持っております。しばらくの間、その楽しみにお付き合いを下さい。
(藤井眞吾/2011年7月22日)
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