《曲目解説》
今回は《歌と踊り》というタイトルなのですが、実際にこういうタイトルの作品は結構あるわけです。ピポーと言うスペインのピアニスト作曲家はこのタイトルでギターのために二つ書いていますし、カタロニアの作曲家モンポーはピアノのための連作として12曲、そして第13番はギターのためです。
今夜はこれらの曲以外に私が勝手に《歌と舞曲》という組み合わせで何人かの作曲家の作品をお聞き頂きます。そもそも《歌と舞曲》という組み合わせは、ゆったりとして美しい「歌(旋律)」と躍動的な「舞曲(リズミカル)」というコントラストが、ひとまとまりの楽曲を形成するために大変好都合なわけです。私を含めて、多くの演奏家や作曲家はいつの間にか、それに限りなく近い楽曲の構成と対比をいつの場合でも考え、演奏会のプログラムを構成したり、作曲をしている筈です。19世紀に発達し、完成したソナタでも、ゆったりした緩徐楽章(第2楽章)と何らかの舞曲(しばしば第3楽章)の対比は絶対と言っていい程見られました。またバロックの時代の協会ソナタでも最終楽章は殆どジーグやブーレのような舞曲か、それに準じた躍動的な音楽で、その前にはゆったりとしたラルゴや案dな手が用意されました。舞曲を集めた「組曲」でも、テンポや楽想のコントラストは不可欠で、しばしばその選択は演奏者に委ねられていたということが、最近の研究では明らかになっています。
本日はそういう意味での音楽の仕掛けを少しばかり、あからさまにすることになりますが、選んだ作品はどれも個性的で美しい物ばかりです。
(藤井眞吾/2011年4月23日)
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