《曲目解説》
18世紀のバロック音楽は、19世紀古典派や20世紀の音楽は勿論のこと、広い意味でのクラシック音楽にとって、大きな影響を与えています。経済的に大きな力を持っていたルネサンス時代のイタリアやスペインの音楽は時を経て、フランスやドイツへと引き継がれます。特に器楽のための作品では、各国の民族舞曲をポプリのように集めた「組曲」という形が流行し、スペイン風とかフランス風、そしてイタリア風やドイツ風と言う「スタイルの変化」を楽しみ始めました。また音楽のあり方、あるいは作曲の方法としての「通奏低音」という考え方はバロックの時代に確立し、そして現在に至るまでそれは引き継がれていると言えるでしょう。
本日演奏するバロック時代の作品は、バッハ、ヴァイス、スカルラッティーという殆ど同じ時代、いわゆる後期バロックに活躍した人達ですが、彼らの作品は「バロック時代」という博物館の陳列物ではなく、現代の私達のとって今もなお輝く宝石の数々であります。リュートの名手 Weiss の作品はバロックリュートの音楽として最高峰の完成を見せていますし、それは後のギター音楽に引き継がれています。バッハその作品を通じて作曲の無限なる可能性を示し、スカルラッティーは鍵盤音楽の可能性、そして作曲のあらゆる自由さを示しました。20世紀の作曲家、F.Burkhart の「パッサカリア」はその基本は全くバロック時代の手法に基づいていると言えますし、ソルの「嬉遊曲」はバロック時代の器楽音楽の流れを汲んでいます。イタリアのギタリスト、M.ジュリアーニのギター曲は、同国の作曲家スカルラッティー同様に、新しいギター音楽の方向、そして自由な音楽を私達に残してくれたと、私は考えています。
バロック音楽が私達に残した物は簡単には語りきれる物ではありませんが、その少しでも感じてて頂けるなら、というのが今日の狙いです。
(藤井眞吾/2011年2月26日)
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