2005年8月25b日

藤井眞吾様

前回のメールで書いた「気になった事」を書いて見たいと思います。これは実は、Weikersheimに日本から参加していた若者達に関する愚痴めいた話なのです。あまりこういう話は年寄臭いから、なるべくしないようにしていたのですが、今回ヨーロッパの若者と比べてあまりに情けなかったので、苦言をここに並べることにします。

以前、藤井さんからメールを頂いた時に、「最近の若者はどうも気概が感じられなくて云々」と仰っていましたが、リヒテンシュタインで出会った近藤さんや朴葵姫さんなどを見ると「いや、中々どうして。最近の若者だってしっかりしているじゃないか」と思っていました。ところが、今回のフェスティバルで見かけた若者達を見ると藤井さんの言っていた事がわかるような気がしました。

ただ、最初にお断りしておかなくてはならないのは、この僕の不満はWeikersheimのフェスティバルのオーガニゼーションとは何も関わりありません。フェスティバル自体は素晴らしいもでした。また、件の若者達が決して傍若無人な振る舞いをしていたと言うわけではありません。むしろ逆にあまりに何もしなさすぎるのです。とりあえず、事の次第をかいつまんで話してゆきます。

それは、初日到着してT.ミュラーぺリングのマスタークラスを見学に行ったときでした。そこでは、ちょうど日本から来たとおぼしき男の子(あえて男性と言いません)がレッスンを受けていました。ところが、この子がまるで先生の言うことを理解していない。トーマスが色々と質問しても、解っているのか解っていないのか、それすらわからないのです。トーマスもちょっと困惑気味で、途中からは生徒に聞かずに見学に来ていた原善伸さんに聞くようになってしまいました。そうなると、その子もトーマスの方を見ないで原さんの方ばかり見ています。こうなると誰のマスタークラスなのかわかりません。まあ、英語が解らないと言う事もあるでしょう。しかし、それなら事前に誰か英語のわかる人に通訳を頼むか、せめて、トーマスが言ったことが理解できなかったら「理解できませんでした」という意思表示をするべきでしょう。

こんな調子のレッスンが2人も続きました。そして、3人目の子がソルを弾いた所で、僕も妻もたまらずその教室を出てきました。

彼らは、一体このマスタークラスをどう捉えているのでしょうか?世界でもトップクラスのギタリストにレッスンをつけてもらえるチャンスは滅多に無いのですから、この機会に先生から最大限何かを引き出せるように自ら努力すべきです。もし英語が解らないのであれば、その欠点を補うべく対策を練ってからレッスンに臨むべきでしょう。そうした姿勢が全く感じられずに、ただ人から与えられるのをじっと待っている態度を見ていると情けなくなってきます。このフェスティバルに参加させるために彼らのご両親は飛行機代など多くの出費をしているはずです。もし自分で稼いだお金で参加したのなら、こんな態度ではいられないはずです。

そして、彼らのファッション、立ち居振舞いがなんと言うかだらしない。演奏する姿勢も聴く姿勢もなんだかダラーとしている。ラップミュージシャンになるのならともかく、僕はこんな人たちが奏でるバッハやソルを聴きたいとは思いません。「既成概念を打ち破る!」というつもりならそれも結構だけれど、そんな気概も感じられない。本来演奏家は観客に夢を与えるような存在でなくてはならないと思います。ひとたび楽器を手にしたら、優雅に振舞って欲しいものです。もし、演奏家になるつもりなら、少なくとも人から見られていることをもうちょっと意識するべきでしょう。

もちろんこんな若者ばかりでなく、中にはしっかりした人もいます。特に、ヨーロッパに留学している人はこちらで苦労している分、どことなく自立した印象を受けます。しかし、総じて見るとどうも日本の若者、特に男子はなんだか子供っぽいような気がしました。

まあ、彼らにしてみれば、どこの馬の骨ともわからぬおっさんにギャーギャー言われるのは迷惑至極でしょうね。今回は、なんとも情けないメールとなってしまいました。それでは、また。

from A

 
 
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