2005年8月25a日

藤井眞吾様

Weikersheimギターフェスティバルの模様の2回目です。今回は最終日にあったコンクールの模様を少しと、少し気になった事があったのでそれについて書いて見たいと思います。

まず、コンクールの模様ですが、本選には8名が残りました。これで、一人30分のプログラムですから、全部聴くとなると4時間かかります。僕は前日の疲れも残っていたのと、この後4時間かけてユーリッヒに戻らなくてはならないので、全部を聴くのはあきらめ、佐々木先生から評判だった数名に絞って聞くことにしました(佐々木先生はこのフェスティバルのオーガナイザーなのでコンクールの審査は無いのだそうです)。

今回はちゃんとメモをとっていなかったので、名前が良くわからない人が多いのですが、最初に聴いた二人の演奏も上手くて、レベルの高いコンクールを予想させます。そして、3人目、アレレ、どこかで見た顔だなと思ったら、今回同室になったAlieksey Viannaです。ヘンツェの3つのティエントスを弾き始めましたが、これがかなり上手い。これは、ひょっとすると良いところまで行くかなと聴いていましたが、なんと、3楽章目で停まってしまったのです。せっかく良い演奏をしていたのに、これがコンクールの無常な所ですね。この後の、ヒナステラのソナタも良い演奏だっただけに残念です。コンクール終了後に彼とは少し話をしましたが、彼はブラジルからやって来ていてこの数ヶ月の間、ヨーロッパのコンクールやフェスティバル、コンサートなどを渡り歩いているのだそうです。彼は実は今年GSPというレーベルから全曲S.Assadの作品集で既にデビューしているツワモノでした。同室になった縁もあるしと思い、最初は多少義理でこのCDを買ってしまったのですが、これがかなり良くて最近の愛聴盤になっています。

その次に現れたのが、今回のコンクールの本命と目されているフランスのThibault Cauvinです。佐々木先生から聞いた話では、このWeikersheimに来る前に既に13のコンクールで優勝し、それ以外でも常に上位に名を連ねていると言う、これまたツワモノです。スカルラッティのソナタから弾き始めましが、もう最初の数音で既にバロック的な匂いを醸し出すとでも言いましょうか、とにかく素晴らしい演奏を聴かせてくれます。最後の曲を弾き終えると聴衆からは歓声とも溜息ともつかない声が洩れていました。確かに後数年もしたら頭角を現してくるかもしれません。注目のギタリストです。

その後幾つかの演奏はスキップして、次に聴いたのが、LIGITAでも2位になったAntal Pusztaiでした。彼の演奏はリヒテンシュタインでも圧倒的なテクニックで他を圧倒していました。ただ、多少早く弾きすぎるきらいがあり、その辺でリヒテンシュタインでは票が割れて1位にはなれなかったようです。今回の演奏ではその辺の欠点を見事に克服してきました。バリバリ弾くスタイルを修正して、じっくりと表情豊かに聴かせます。たった、1ヶ月でここまで演奏が成長するとは!これは驚きでした。個人的には彼の演奏が今回のコンクール中一番良かったように思われます。

最後に演奏したのが、日本人で唯一本選に残った谷辺昌人氏です。彼もLIGITAではAntalと同時に2位でしたが、その時弾いたヒナステラのソナタは素晴らしかったです。今回もこのソナタと、ロシニアーナ1番で本選に望みました。ただ、正直に言えば、ロシニアーナはいまいちかなと言う印象でした。テクニック的には問題ないのですが、所々に、彼が今回とLIGITAでレッスンを受けたPavel Steidlっぽい歌いまわしがもろに出てくるのです。これが、どうも彼本来がもつ歌いまわしとマッチしないような気がしてチグハグな印象を受けました。まして前日にPavelも同じ曲を弾いているのでネタがばれてしまっている。高いレベルの演奏者がそろっていて、かつ演奏者の個性を重んじられるヨーロッパのコンクールでは、今回の谷辺氏の演奏はちょっと苦しいかなと言う気がしました。とは言うものの、彼自身は素晴らしいテクニックを持ったギタリストであることは間違いありません。

と、この様な具合でしたが、さて結果は・・・というと、実は発表になる前にWeikersheimを去らなくてはならなかったのでわからないのです。とても気になるところなのですが・・・。この辺については後日機会があれば佐々木先生に聞いて見ます。

ところで、一番最初に気になった事と言いましたが、これはメールを改めて書いて見たいと思います。正直言えばあまりポジティブな内容ではないと思うので、この文章と一緒にしないほうがよいような気がするのです。それでは。

from A

 
 
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