2005年8月24日

藤井眞吾様

日本は暑い日が続いていると聞きますが、いかがお過ごしですか?今年のドイツは7月頃に一時期少し暑くなっただけで、その後、夏らしい日を迎える前にもう秋の装い迎えようとしています。

先週末の土日にはドイツ南部ヴルツブルグ近くのヴァイカースハイムで開かれていたギターフェスティバルに妻と二人で行ってきました。このフェスティバルはアーヘン音楽学校の佐々木忠先生が2年に一度企画運営されているギターフェスティバルで、マスタークラスにコンサート、コンクールなど盛りだくさんのイベントです。

ユニークな点はヴァイカースハイムの城の中でこのフェスティバル自体が開かれていることです。ヴァイカースハイムの城はバロック・ロココ調の美しい建物を改修してセミナールームなどが設けられており、またすぐ近くには研修用宿泊施設があるので、この様な企画にはまさにもってこいのロケーションでした。さらにはヴァイカースハイムの町自体がドイツの観光名所の目玉の一つ「ロマンチック街道」上にあるため、はるばる日本からも多くの参加者がありました。

そしてもう一つユニークな点は、フェスティバルがギターだけでなくフルートやマンドリンのクラスも設けられている点です。今回、ギターのみならずフルートのマスタークラスなども聴講できたのはとても興味深かったです。一応ギターがメインのフェスティバルですが、この様に他の器楽との接点が設けられているのはとてもよいアイデアだと思いました。

このフェスティバル自体は1週間程続いていたのですが、僕は仕事もあり、休暇もLigitaで使ってしまったので今回は佐々木先生の特別の計らいで週末のみ参加させていただきました。とは言うものの、僕の住むユーリッヒからヴァイカースハイムまでは400km近くあり、土曜の朝発っても現地についたのは2時過ぎ。マスタークラスもほぼ終わり近くになっていました。とりあえず何とか滑り込みで、トーマス・.ミューラーぺリング、佐々木忠、ロベルト・アウセル3名のレッスンを少しだけ聴講できました。

また、ここではLIGITAで一緒だった、谷辺昌人氏とAntal Pusztai氏にも再会しました。二人とも前回のLIGITAのコンクールで1位なしの同率2位となった実力者です。聞けば、二人とも今回も予選を無事通過したとの事で、とりあえずおめでとうを言って、翌日の本選の演奏を楽しみに待ちます。

そして、もう一人LIGITAの来てられた、ギター製作家の今井勇一さんとも再会。この様なフェスティバルに参加して、積極的に世界のギタリストと交わりながら、それぞれの意見に耳を傾け、さらにそれをご自身の製作の糧にして行く今井さんの姿勢は本当に素晴らしいと思いました。こうした積極的な姿勢がヨーロッパでの彼のギターに対する高い評価につながっているのだと感じます。

そして到着したその夜には2つのコンサートがありました。一つはLIGITAでも熱演を聴かせてくれたPavel Steidl。そしてもう一つはKatona Twins Duoです。

まず、Pavel Steidlですが、またまたやってくれました。例によって遊び心満点で爆笑、熱狂のコンサートでした。ちょっと悪乗りしすぎ?の部分も無きにしも非ずでしたが、観客が受けると、それに応えて彼もノッて来るといった具合で、彼にしか作り出せない独特のコンサートでした。

最初のプログラムの予定ではバッハのシャコンヌやテデスコのソナタなども含まれていたのですが、会場のくだけた雰囲気で進行するうちに、メルツやパガニーニ、彼の自作曲など、彼の持ち味である遊び心が発揮できる曲へ変更になりました。演奏の点で言えば今回は細かいミスなどもあり、前回のLIGITAの方が良かったかもしれませんが、とにかく観客の反応に彼の演奏が応えて来るのがわかります。中には笑いを堪えきれなくて廊下に飛び出して行く人もいて、それをみたPavelもまた大喜びでノッテ来るのです。ジュリアーニのロシニアーナでは一瞬、曲を忘れた部分があり、とたんに即興でフレーズを作り出してやり直したりして、会場にはギタリストが多いですから、曲を知っている人にはこれは大受けでした。何かこれはもう、クラシックと言うよりはジャズのノリに近いかもしれません。そして、ひょっとして19世紀にパガニーニなどが行なっていたサロンコンサートとはこんな雰囲気だったのかな、とふと考えてしまいました(パガニーニの有名なエピソードに、バイオリンの弦にわざと切れ目を入れておいて、弦がどんどん切れていって最後の1本だけで曲を弾w? ききったというのを思い出しました)。

そして、続くKatona Twin Duoですが、曲目は以下のとおりです。

J.S.バッハ:「フランス組曲」より
ロッシーニ/ジュリアーニ:??
M.C-テデスコ:「平均律ギター」より
M.de.ファリャ:「恋は魔術師」より
A.ピアソラ:ブエノスアイレスの四季

Katona Duoを聴くのは初めてでしたが、これも迫力の演奏でした。双子の兄弟である彼らは姿形がそっくり(というかほぼ同じ)で、着ている物からギター、演奏スタイルまで似ているので、なんだか真中に大きな鏡を立てて聴いているような錯覚に陥ります。息のピッタリ合った演奏に、彼らが今ヨーロッパで一二を争う人気ギターデュオという評判も頷けます。ただ、正直に言えばファリャやピアソラのアレンジではギターのパーカッシヴな面を強調しすぎるきらいがあるかなとも感じました。確かに、迫力はあるけれど、ちょっと疲れると言うか・・・。もっとも、まだ若いギタリストですし、これから円熟して行くのでしょう。

とこのように4時間近い運転の疲れも吹き飛ぶような密度の濃い1日目が過ぎて行きました。このフェスティバルの模様については、もう一度くらい書いてみようと思います。それでは、また。

from A

 
 
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