2005年7月21日

藤井眞吾様

> リヒテンシュタインの話は楽しみにしていました。

ありがとうございます。本当に楽しい一週間で、もう話し出すときりがないのです。たぶん一生、心に残る思い出です。僕自身は一介のアマチュアですから、今後頻繁にこの様な講習会に参加する事は難しいと思います。この様な機会が得られたことは本当に幸せでした。

>  A君は最初は聴講生だったのですよね? 
> あとから受講生としてレッスンも受け
> ていたと近藤君から聞きましたよ。君のレッスンのこと
> なども是非聞きたいですね。

はい。この辺の経緯については、次回にマスタークラスの模様などと共に書いて見たいと思います。とりあえず今回はパヴェル・シュタイドルと福田進一さんのコンサートの模様をレポートします。

まず、パヴェル・シュタイドルのコンサートですが、これは衝撃的でした。彼のメルツやレニヤーニの素晴らしいCDを聴いて非常に気になっていたギタリストの一人でしたが、噂通りいやそれ以上の演奏でした。もうすでに二度来日しているそうなので藤井さんもお聴きになられたと思うのですが、とにかく顔が・・・(絶句)。体全体での音楽を表現している感じで、これほど曲の中に潜んでいる感情をわかりやすく伝えてくれるギタリストと言うのは稀なのではないでしょうか。演奏曲目は以下の通りです。

1. J. A. Losy: Ouverture-courante-sarabande-bouree-gigue
2. J. K. Mertz: Bardenklaengeより、An Malvina, Mazurka, Gondoliera, Variation Mignones
3. N. Coste: Deuxieme Polonaise op.14
Pause
4. J. S. Bach: Chaconne
5. N. Paganini: form Sonate and Ghiribizzi
6. M. Giuliani: Rossiniana op. 119

とにかく彼の19世紀ギターの表情がとても豊かなのです。1曲目のLosyではまるでリュートを思わせる幽玄な響きから、MertzやCosteのロマンチックな表現へと自由自在でした。決して大きな音で弾いているわけでは無いのですが、弱音の魅力と絶妙の間で聴衆を惹きつけていました。後半1曲目のバッハは、こんなレパートリーも持っているのかと以外な気がしましたが、これも素晴らしかったです。しかめっつらの演奏が多いバッハが、実はこんなに表情が豊かな音楽だったのだと改めて認識させられました。そして、最後はジュリアーニのロシニアーナ。随所に手を加えていて遊び心十分の演奏です。この改変は元のロッシーニのオペラを意識した物であることが後でわかりました。

本当に素晴らしい演奏会で、パリで勉強している台湾出身のギタリストMeng-Feng(ムンファン)君は、近藤さんからシュタイドルが2度も日本へ行っている話を聞いて、「いいなあ、彼はパリにはまだ一度も来ていないのだよ」と羨ましがっていました。

さて、この演奏の後で皆の興味は福田さんのコンサートに移ってゆきました。と言うのも、この翌日にある彼のコンサートの目玉がロシニアーナのガダニーニ19世紀ギターによる全曲演奏にあるからです。ただでさえギターマニアの集っているフェスティバルですから、シュタイドルのあのロシニアーナの後で福田さんがどんな演奏をするか皆(多少意地悪く)興味津々といった所です。

そして福田さんのコンサートですが、曲目は以下の通り。

1. M. Giuliani: Rossiniana No. 2 op. 120
2. L. Brouwer: Hika
3. M. Giuliani: Rossiniana No. 1 op. 119 Pause
4. T. Hosokawa: Serenade for guitar
5. M. Giuliani: Rossiniana No. 3 op. 121

日本、いやアジアではトップギタリストとして揺るぎない人気、実力の福田さんですが、ヨーロッパではまだ彼の生の演奏を聴いたことの無い人も多いようです。僕自身、福田さんの演奏を聴くのは15年ぶりです。心の中で「日本代表がんばれ!」と変な応援を送りつつも、昨日のシュタイドルの熱狂的な演奏会と否が応でも比較してしまいます。

しかし、一曲目のロシニアーナでもう観客をノックアウトしてしまいました。凄まじいvirtuosityです。もうこのレベルになるとテクニック云々ではないですね。福田ワールドにグイグイ惹き込まれます。さすが! 心なしか15年前よりアクションが派手な気がして、これは昨日のシュタイドルを意識してかなと思ったら、近藤さんによると最近はそうなのだそうですね。とにかくスケールが大きくて、以前よりパワーアップした感じです。本人にとっては当たり前の事かもしれないですが、今でも音楽が前進し続けてると言うのは本当に素晴らしいことだと思いました。

BrouwerとHosokawaでは今回、やはりフェスティバルに来られている今井勇一さんのギターに持ち替えての演奏でした。Hosokawa氏の曲は琴をイメージした曲だそうですが、随所にBendingが出てきてこんなに弦を引っ張って調弦が狂わないかハラハラしてしまいました。最後のロシニアーナ3番になるとさすがに3曲連続はしんどくなったのか、多少ミスがありました。最初から飛ばしすぎ?と、いってもこのレベルの演奏では音楽的には問題になりません。それよりも、この難曲を一つのコンサートで全曲弾いてしまうという大胆なチャレンジ精神には本当に脱帽です。

と、この様にフェスティバルのコンサート前半は過ぎて行きました。この翌日は前半のハイライトでもある、ディヴィッド・ラッセルのコンサートでしたが、この模様は次々回にして、次回はマスタークラス全般の様子についてレポートしてみたいと思います。それでは、また。

from A

 
 
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