2005年7月20日

藤井眞吾様

メールありがとうございます。少し前に2週間の休暇から帰ってきました。日本の感覚からすると、2週間の休暇と言うのは非常に長い感じがしますが、こちらでは標準的かむしろ短いくらいなのです。こちらへ来た当初は、日本の忙しさになれていたせいか、2週間も休暇を取ることに躊躇いがありましたが、今ではすっかり慣れてしまい、このままでは日本に帰った時にどうなるか心配です。でも、このおかげで僕もリヒテンシュタインギターフェスティバル(以下Ligita)に参加することが出来ました。

以前のメールにも書きましたが、このフェスティバル、とにかく講師陣がすごいのです。メイン講師だけでも、パヴェル・シュタイドル、福田進一、デイル・カヴァナー、ディヴィッド・ラッセルそして音楽監督もつとめるアルヴァロ・ピエッリ。彼らのコンサートが毎晩あるのです!これに、アンドレ・ミオリン、カルロ・ドメニコーニ、グルーバー・マクラー・デュオ、ユリー・クロールマン、ソニャ・プルンバウワーなどの講師陣が加わります。また、この他にフラメンコのコースもあって、ギターマニアにはまさに天国とでも言いたいような1週間でした。

リヒテンシュタインはご存知と思いますが、スイスとオーストリアの間にある小国です。フェスティバルが開かれた音楽学校は首都のファドゥーツではなくてエッシェンという小さな村のさらに村はずれにありました。さらには音楽学校の建物は消防署と兼用してあり1階には消防車が並んでいる上を登って行くと2階に音楽学校がありました。豪華な講師陣と比べてなんと地味なロケーション。そして宿舎は、なんと形容してよいのか小学生の頃に行った林間学校のようなところで、三段ベッドの格段に3人くらいずつ雑魚寝状態の所でした。最初に見た時はちょっと絶句しましたが(まさかこの歳で雑魚寝の宿に泊まるとは思わなかった)、最後にはルームメート同士で一種の結束のようなものが出来て、結果的には楽しいものとなりました。

このときに近藤さんと同室になり、また一緒になったメンバーが後々コンクールの時などに盛り上がってくるのですが、この辺については折々に触れるとして、まずは1日目のフラメンコのコンサートの模様を書いてみたいと思います。

やはりフェスティバル1日目は景気付けにフラメンコで盛り上がるのが一番です。この日は前半がGerardo Nunesのギター。はじめの数曲はソロで、速弾きや激しいリズムで盛り上げます。意外とコードの響きがモダンで従来のフラメンコのイメージとは違って、ジャズを思わせるところもありました。途中からLeonor MoroのダンスとCarmonaの歌が加わりました。Moroのダンスは妖艶でしたが、なんだかちょっと添え物っぽい感じがします(しかしこれが後半ではがらりと変わるのですが)。ともかくも出だしからレベルの高い演奏に、フェスティバルへの期待が高まります。

後半はギターがMarino Martinに代わりアンサンブルが主体となりました。前半のNunesがモダンなタイプのフラメンコギタリストとすれば、Martinはもっとトラディッショナルな感じです。コード一つ弾いただけで、全体の雰囲気がスペインの裏通りのうらぶれた感じになるような感覚です。そして、ここでのMoroのダンスが凄かった。顔に力が入っていて、見るからに気合の入り方が違います。観客が圧倒されて呆然としていると、「何をボケッとしているの!」とでも言うようなジェスチャーでMoroが煽るのです。とにかく、その高いテンションに圧倒されっぱなしのコンサートでした。

と、このような1日目でしたが、このペース書いていてはレポートが膨大な量になってしまいそうですね。次回は2日目のパヴェル・シュタイドルと、3日目の福田進一さんのコンサートの模様や、マスタークラスの様子を書いて見たいと思います。それではまた。

 

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