2005年5月25日

藤井眞吾様

いかがお過ごしですか?こちらはすっかり初夏の装い・・・と言いたい所ですが、いまいち肌寒い日が続いています。それでも、日が長くなり(今は夜9時近くまで明るいです)、カフェのテラスも太陽を求める人でいっぱいになってきました。本当に北ヨーロッパの人は太陽の光が好きなようで、僕には肌寒いと思われるような天気でも平気で外でビールを飲んでいます。

先週末の金曜日にはケルン音楽大学アーヘン分校にて、佐々木忠師門下生の発表会を聴いて来ました。プログラムは以下の通りです。

演奏者/ 曲目・作者

Andreas Bucur/
Sonata A-Dur K.208, d-Moll K.1(D. Scarlatti)

Hans-Peter Woessner/
Suite A-Moll BWV997 (J. S. Bach)

Noriyuki Masuda/
Prelude, Fuge und Allegro BWV998( J. S. Bach)

Lai Zhu/
Aquarele (S. Assad)

Takayuki Takegata/
Mazurka Apassionada(A. Barrios-Mangore), Tarantelle ( M. C. Tedesco)

--- Pause ---

Pavel Klushin/
Sonata Giocosa (J. Rodorigo)

Christian Ulrich/
Sonata op.47(A. Ginastera)

Renbach Oleksander/
Sonata<Omaggio a Boccherini> (M. C. Tedesco)

全体的に演奏レベルも高く、さすがに音楽学校の生徒の演奏と感心させられましたが、これは佐々木氏の指導の良さかもしれません。以前、同校のHans-Werner Huppertz門下生の演奏を聴いた時は(ここだけのはなしですが)ちょっとレベルの低さにガッカリした経験がありましたから。

発表会の常(?)で演奏レベルは後半へ行くほど高くなりました。とはいえ、最初に演奏したBucur氏のスカルラッティやMasuda氏のバッハは抑えられた表現の中にも自然な歌心を感じさせ印象に残りました。逆にZhu氏のアサドやUlrich氏のヒナステラは、ちょっと表現が平坦すぎるかなと言う不満も残りました。技術的には両者ともしっかりしていましたが、この辺が曲の難しさでしょうか。

話は逸れますが、ヒナステラのソナタといえば、昔聴いたエドゥワルド・フェルナンデスの凄まじい演奏が僕の印象に残っています。多少難解で退屈と思っていたこの曲を、激しいリズムと明確なコントラストで最後まで観衆を惹きつけておいた彼の演奏は、この曲に対する僕の見方を変えてしまいました。

前半のとりを務めたTakegata氏も上手い人でしたが、如何せん非常にあがっていたようで、おまけにバリオスでは多少調弦が甘くなってせっかくの良い演奏の魅力が半減されてしまいました。それでパニックになったのでしょうか、続くテデスコでも出だしからオーバーペース気味で最初はリズムが不安定でしたが、だんだんと調子が出てきたようで最後は素晴らしく締め、拍手を浴びていました。最初からこの調子が出ていたらと思うと惜しい演奏でした。

後半の三人はやはりトリを務めるだけあってさすがなものです。特に最後のOleksander氏は、この1ヵ月後に最終試験を控えているせいか、気合の入った演奏を聴かせてくれました。

見たところ皆さん20代でしょうか。このまま成長してゆけば将来が楽しみです。特に(同朋の身びいきかもしれませんが)日本人の方には頑張ってもらいたいものです。

演奏以外で印象に残ったのは、皆ステージマナーが堂々としていたことです。多少拙い演奏をしても態度が堂々としていると、最後はやはり良い印象が残ります。実はこれが前回の他の先生の発表会のときに非常に不満に残った点でした。プロを目指す以上、単に上手い演奏のみではなく、その演奏を魅力的に見せるためのステージマナー、選曲などにはもっと心をくばってほしいものだと思いました。これはギターのみではなく、科学研究発表の場合にも共通することだと思っています(「演奏会」=「学会」、「演目」=「研究テーマ」、「演奏」=「発表内容」)。思い返すと、昔、藤井さんから受けたギター演奏マナーに関するアドバイスが、こんな所で今の僕の研究発表の際に非常に役立っていて面白いです。

来週は近くのHeinsbergと言う所でギターフェスティバルが開催されます。Roman Viazovskiy、Thomas Mueller-Peringらがコンサートをする予定なので楽しみです。仕事があるのでどれだけ見に行けるかはわかりませんが、この辺について次回はレポートしてみたいと思います。それでは、また。

from A

 
 
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