2004年10月25日

藤井眞吾様

  秋もそろそろ暮れる頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。今年の日本は台風や地震で大変な様ですね。ドイツは今のところ比較的平穏な日々が続いています。

 昨日は妻や友人と連れ立って、モーゼル川周辺のワイナリーへ遊びに行って来ました。今、この辺りはブドウの収穫の真っ最中で、日曜日なのにそこここでワイン用のブドウの摘み取りをする姿がみられました。この付近には多くのプライベートのワイナリーがあります。それぞれの蔵(Keller)では、そこで取れたワインのリストが用意されていて無料または40〜60セント(日本円で50〜70円)で試飲させてくれるのです。気に入ったワインがあったらそこで購入します。このワインがとても安い。日本なら数千円しそうなワインが一本4〜6ユーロで買えるのです。私達夫婦はせいぜい一つのケラーでは2〜3本しか買いませんでしたが、一緒に行ったドイツ人の友人は数ケースの単位で買っていました。

  色々試飲させてもらった結果、2003年のワインというのは確かに美味しいかったです。これは昨年のヨーロッパは記録的な猛暑でブドウの質が非常に良かったからなのだそうです。もし、2003年のドイツ産のワインを見つけたらぜひ試してみてください。でも、この夏のドイツはあまり暑くならなかったので、2004年のワインは今ひとつかもしれませんね。

  と、こんな自慢話はさておき、2週間ほど前ケルンでWulfin Lieskeのソロリサイタルに行ってきました。ご存知かもしれませんが彼はケルンを中心に活躍するギタリストです。場所はケルン市内の教会で、アコースティックは素晴らしい所でした。プログラムは下記のとおりです(今手元にないので、詳細が曖昧ですが)。

一部
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第一番BWV1007 (Lieske編)
自作曲:Taqsim I-III

二部
チャピ:ムーア風セレナータ (という日本題だったと思うのですが・・・)
マラッツ:???、スペイン風セレナータ
R.サインスデラマーサ:???、ソレア
E.サインスデラマーサ:アルバの鐘
R.サインスデラマーサ:サパテアード
アンコール パコ ペーニャの曲
アルベニス:コルドバ(Lieske編)
(???は題名を思い出せない曲です)

 全体的にはとても素晴らしいコンサートで、どの曲も多彩な音色と鮮やかなテクニックで楽しませてくれました。一曲目のバッハは自編で、低音部にはかなり音を加えてあって、これはもうバッハの曲というよりはLiesk-Bachの競作といった趣でしたが、不自然な感じではなくて一つの解釈として面白かったです。でも、テクニック的にはすごく難しそうでした。 続く自作曲のTaqsimはトルコ〜中東にかけてのベドウィンのウードの響きを基に作った曲との解説でしたが、ちょっと抽象的な曲でした。正直に言うと僕には今ひとつ(元々現代曲は好きなほうなのですが)。ギターを使って色々と風変わりの音色を作り出してそれなりに楽しめるのですが、口悪く言えば、酔っぱらってギターで遊んでいたの弾いた風で、なんだかまとまりのない感じでした。5分くらいでまとまっていれば、良かったのですが20分くらいの大曲な物ですから、聴いている方もその間緊張を持続させなければならなくて、ちょっと辛かったです。

 後半は一転してスペイン物のプログラムですが、こちらのほうが僕には楽しめました。チャピはタレガの編曲を基に自分で編曲し直したものだそうです。この曲は確か敬吾さんも得意にしていた曲ですね?マラッツの曲共々、若干早めのテンポで鮮やかに弾ききっていました。続くサインスデラマーサの曲にしてもとにかくリズム感が良いので安心して聴いていられました(実際には時々音を外すこともあったのですが、リズムが良いのと、タッチが綺麗なのであまり気になりませんでした)。アンコールのパコペーニャやアルベニスの曲といい、これらのスペイン物は彼の好きなレパートリーなのでしょうか、全体的にリラックスして弾いている印象を受けました。

 本編のプログラムを組んだ彼には悪いのですが、僕が一番楽しめたのはアンコールで弾かれたアルベニスのコルドバでした。演奏も見事でしたし、編曲も良かったです。僕の前の席に座っていた女の子(多分ギターを弾く人なのでしょう)が、この曲をアナウンスした時に“Jetz!!(やったー)”と小声で言ってガッツポーズをとっていましたから、たぶん彼の得意なレパートリーなのでしょう。

  何はともあれ、久しぶりのギターソロコンサートを堪能して帰ってきました。 音楽について言葉で書こうとすると常にもどかしさが付きまとうのですが、それでも良い音楽に出会えると何か語らずにはいられない衝動に駆られてしまいます。駄文にお付き合いさせてしまい申し訳ありませんが、また何か面白い事があればメールしてみたいと思います。

from A

 
 
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